サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
万能型が揃う代表に“一芸”で挑む。
永井謙佑にハリルが期待すること。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/09/02 11:30
永井謙佑の瞬間最高速は時速40kmを超える。日本人最高峰のその快足は、速い攻撃を目指すハリルホジッチ監督にとって魅力的に違いない。彼の活かし方を発見することができるだろうか。
欠点を埋めるよりも、武器を伸ばす思考。
「足は速いけれど××ができない」
「背は高いけれど××が足りない」
そんな評価を受けて消えていく選手は、過去の代表にも少なくなかった。もちろん、力不足という原因も確かにある。日本代表は平均的な身体能力で劣るのだから、個の力よりも組織の一員として働ける選手が必要なのも事実だ。しかし“一芸”が突出していれば、それは絶大な武器となる。そのためにも“使っていく”ことを模索することは無駄ではない。
「代表では、周りの選手がむちゃくちゃ巧い。そういうなかで吸収できることはたくさんあるから、そこで成長していくのが一番いいと思う。足りない部分も伸ばさないといけないけれど、僕の武器であるスピード、他の人が持っていない部分を伸ばしたほうが、よりチームに貢献できると思っている」
「出しどころがない時の逃げ道」でもいい。
とはいえ、育成中であることが免罪符になるわけではない。公式戦の場で「結果を残さなければ」という危機感は永井にもある。
日々のトレーニングでチームメイトとのコミュニケーションを深めることはもちろんだが、何よりも信頼を得ることこそが、自分を活かしてもらいやすい状況を生みだす。
「相手が守備を固めて引いてしまうと、なかなか僕の特長は出しづらい。でも、相手が攻めようとしたところで、カウンター攻撃に出るシーンもある。そういうところで、しっかりと攻撃参加したい。預けて前へ出れば、パスはいくらでも来ると思うから。そういうアクションを出し続けることが大事。そういうのをやり続けたい。
ボールの出しどころがないとか、困ったときの逃げ道でもいい。『あそこへ出しても追いついてくれる』という風に思ってもらえればチャンスは生まれる。そういう関係を作っていきたい」
たとえば日本が1点リードした展開で、前へ出ざるを得ない相手に対して、永井のスピードを使って試合を決める追加点を狙うこともできるだろう。引いた相手をおびき出し、裏を狙うというプランに磨きがかかれば、すなわちそれは、日本代表の新たな強みになるはずだ。