スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バルセロナ、今季唯一の“新戦力”。
ベルメーレン「昨季は最悪だった」。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2015/09/02 10:30
トーマス・ベルメーレンは、ベルギー代表に“黄金時代”をもたらしたメンバーの一員でもある。アヤックス、アーセナルという遍歴はバルセロナのスタイルにフィットする予感で満載だ。
ついに示したベルメーレンが「即戦力」たる理由。
しかし、それらの苦悩も今となっては過去のものだ。先出のコメントにもあった通り、上々のコンディションで迎えた今夏のプレシーズンマッチでは積極的に起用するルイス・エンリケ監督の期待に応え、ようやくスビサレッタが「即戦力」と太鼓判を押した理由を示しはじめた。
今季の公式戦デビューとなったアスレティック・ビルバオとのスーペル・コパ第1戦では、控え組を多数起用したこともあり0-4と大敗したが、ジェラール・ピケの出場停止を受け先発したリーガの開幕戦では、スーペル・コパで3ゴールを喫したビルバオのアリツ・アドゥリスを抑え込み完封勝利に貢献。そしてマラガとの第2節では2試合連続の完封に加えて自ら決勝ゴールまで決め、一躍ファンとメディアから賞賛の嵐を受ける存在となったのである。
「このゴールは、昨季を通してフットボールができず、大きな戦いを乗り越えた彼へのご褒美だ。自分も嬉しいよ」
試合後そう言っていたのは、センターバックを組んだマスチェラーノだ。同じくルイス・エンリケも、試合後の会見で喜びのコメントを発していた。
「彼がハイレベルな選手であることは知っていた。まだトップコンディションにはないが、それでも我々に多くのものをもたらしてくれている。セットプレーではキーマンとなる存在だ。彼の代表復帰は私も嬉しいよ。現在のコンディションを推し量る良い機会となるはずだ」
補強禁止中のバルサにとって、唯一の戦力的上積み。
長いトンネルを抜け出すのと並行し、8月1日には第二子が誕生した。最近の活躍により、ワールドカップ以来となるベルギー代表復帰も果たすなど、2年目のベルメーレンは公私ともに最高のスタートを切った。
来年1月まで新規の補強が禁止されている現在のバルサにとって、ベルメーレンの復活は今夏唯一の戦力の上積みとなっている。
代表ウィークを経て再開するリーガでは、難敵アトレティコ・マドリーとのアウェー戦が待っている。まだピケの出場停止が2試合残っているだけに、再び最終ラインには背番号23の姿が見られるはずだ。
昨季はその存在すら忘れかけていたバルセロニスタたちも、今は彼が無傷で代表から帰ってくるのを心から願っていることだろう。