プレミアリーグの時間BACK NUMBER
プレミア、最大のサプライズは誰だ。
岡崎慎司の評価急騰は嬉しい誤算?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2015/08/31 11:50
レスターの岡崎慎司はプレミア特有のフィジカルなサッカーに早くも適応の兆しを見せている。一人で局面を打開するタイプではないだけに、チームとの相互理解が重要だ。
前線での守備を含め「通用する」という手応え。
持ち味の1つであるハードワークは、サンダーランドとの開幕戦(4-2)から観衆の目に留った。得点には至らなかったが、センターサークル内で敵のコントロールミスを逃さず、奪ったボールを力強くキープしてカウンターの起点となったシーンがその一例だ。
続く2節ウェストハム戦(2-1)では、シュート後のリバウンドにジャンプ一番のヘディングでプレミア初ゴール。相手GKにセーブを強いたボレーも、本人が「以前ならトラップしていたと思う」とクラブ公式サイトで語っているように、判断を含めたスピードの世界であるプレミア入りがプラスに働いたようだ。
チームの2点目にも、ボックス内の動き出しで絡んでいる。その岡崎に、元マンチェスター・ユナイテッドDFのガリー・ネビルは、「2トップの一角で求められる仕事を全てこなしている」と感心。元アーセナルFWのイアン・ライトも「活きが良い」と気に入った様子だった。
両テレビ解説者の褒め言葉と同様に、翌3節後の記者陣の反応も日本人としては嬉しかった。引き分けたトッテナム戦(1-1)で岡崎自身に得点はなかったが、翌日にウェストブロムウィッチ対チェルシーを訪れた筆者には、「オカザキの出来は良かった」、「存在は効いていた」と顔見知りの記者たちが声を掛けてきた。
3年前、今夏の岡崎をはるかに上回る期待を背にマンU入りした香川真司でさえ、得点に絡めない試合では「消えていた」と言われることが多かっただけに、岡崎はフィジカルも必要な前線での守備を含めて「通用する」と認められ始めたと感じられた。
4節ボーンマス戦(1-1)では1トップシステムの採用で先発を外れたが、勝ち点1を獲得できた裏には、追う立場で迎えた後半に流れを変える一助となった和製ストライカーの投入があった。
クリスタルパレスでは下部リーグから来たFWが!
レスターと同じく予想外のトップ4で8月を終えたクリスタルパレスでは、バカリ・サコという“サプライズ”が前線に現れた。イングランドに来て4年目のマリ代表MFだが、ウルブズでの過去3年間は2部と3部のピッチが舞台。昨季リーグ戦でも15得点を上げていたが、契約満了に伴う移籍という事実も相俟って、プレミアで通用するかは怪しいと見られていた。
ところが、先発デビューを果たした3節アストンビラ戦(2-1)の前半から、果敢なミドルで相手ゴールを脅かす存在感。後半には先制点に繋がるCKを奪い、カットインからのシュートで追加点にも迫った。チームに勝利をもたらしたのは、カウンターを締め括ったパワフルなシュートだった。
続くチェルシー戦(2-1)では、1ゴール1アシストでアウェイでの大金星に貢献している。180cmの上背に厚みもある体格と、自ら「パワー満載」と表現する左足を武器にゴールを狙うサイドアタッカーは、小柄なチャンスメイカーの印象が強い2列目攻撃陣にあって、ゴールゲッターの香りも漂う異色の注目株だ。