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福島千里、決勝ならずも復活の気配。
100m予選の「悪いところがない」走り。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2015/08/25 11:15
女子100mで期待を集めた福島千里だが、準決勝では予選時の好調な走りができず、風の条件は良化していたがタイムは落ちてしまった。
周囲の期待、自分の「欲」が力みや硬さに。
手ごたえがあったからこそ、予選の後には抱負をこう口にしていた。
「自己ベストを狙っていきたいと思います」
日本記録を保持しているのは福島だから、自己ベスト、イコール日本新記録である。迎えた準決勝でも、好調は保っていた。
「ウォーミングアップはすごくよかった」
ただ、それが災いした。調子がよければよいほど、記録を出したいという思いは強くなる。気負いがちな性格は、これまでも指摘されていた。
例えば、初めての世界選手権となった2009年の大会では、2次予選で「力みもあった」走りで準決勝進出を逃した。
福島千里を指導する中村宏之監督も、昨年のアジア大会を例に出しつつ、福島の課題を指摘していた。
「調子よかったんですけど、頑張りすぎた。期待に応えようとして力が入りすぎるとだめなんですね。ただ、だいぶ変わってきてはいると思いますが」
周囲の期待のみならず、自身の「もっと速く」という思いも、しばしば力みや硬さとなってしまう。その課題があらためて浮き彫りになったのが準決勝だった。
「予選からタイムを落としてしまったし、勝負したいところで結果が出なかったので、駄目です」
2010年以後、続いていた低迷期脱出の気配。
一方で、収穫もあった。
これまでに何度も日本記録を更新してきた福島だが、最後の更新は2010年のこと。以来、記録を伸ばしていない。2013年の世界選手権では100mの代表を逃したように、低迷と言ってよい時間が続いてきた。
しかしそれは、世界でより上位へ、もっと速く走るために、と試行錯誤を繰り返してきた結果でもあった。ときにフィジカルを鍛えてのパワーアップに活路を求めるなどもしたが、それが本来のよさを失わせた時期もあった。
そんな苦しい期間を脱け出したことは、予選の走りに明確に見て取れた。