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小布施見にマラソンで出会った人々。
猛暑を完走した87歳の仮装ランナー。
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph byTatsunori Suzuki
posted2015/08/16 10:40
小布施見にマラソンは、仮装も「本気」である。今大会では、ゴジラとモスラが出会う、なんていう奇跡も。
赤ずきんの仮装で走りきった87歳の女性も。
お昼時が近づき、最終ランナーがフィニッシュラインに到達するころ、コスチューム賞の表彰式はクライマックスを迎える。
毎年恒例になっている、入賞しなかった仮装ランナーも全員舞台に上り、多彩な手作り仮装を披露するフィナーレである。
そのなかで、ひときわ可愛らしい赤ずきんの仮装をした2名の女子が仲良く手を繋いで登壇してきた。可愛いけど、それなりのご高齢。
仮装のレベルは入賞するものではないが、オーラが漂っている。
自然の流れでインタビューマイクを向けた。
MC「可愛い赤ずきんちゃんですね~~~。この仮装はどちらが発案したのですか?」
赤ずきんちゃん「こっちの人です。せっかくだから何かやろうって」
高齢の方がはにかみながら少し若い女性を指した。
MC「そうですか~。ところで、失礼ですがおいくつでいらっしゃいますか?」
赤「……ん~~~87歳」(恥ずかしそうに)
MC「えっ!!! 87歳、すごい! この暑いなかハーフマラソンを走りきったのですか! 素晴らしい! みなさん、大きな拍手をお願いします!」
実年齢を聞き、会場からはどよめきと大きな拍手が送られた。しかし、それだけでは終わらない、このあと衝撃の事実が。
実はブラインドランナーのガイドランナーでもあった!
赤「私はね、この人(若い女性を指して)目が不自由だから、毎週、代々木公園で一緒に伴走してるの。もう30年になるかな~」
MC「えっ……」
僕も会場のランナーたちも、全員が思わず絶句、そして割れんばかりの拍手が起こった。
87歳という年齢だけでも十分に素晴らしい。
この赤ずきんおばあちゃんは、なんと暑いなか仮装しただけではなく、ブラインドランナーのガイドランナーとして、サポートしながらハーフマラソンを完走したのだ。
最初は、若い女性が高齢の女性をガイドしているのかと思っていたが、実は逆、高齢の女性が目の不自由な若い方をガイドしていたのだ。
その場にひれ伏して拝みたいくらいの気持ちになった。