濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
16歳の那須川天心、連続KOの衝撃。
優勝して、気分はスーパーサイヤ人!
posted2015/08/09 10:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
現在の格闘技界には“神童”や“天才少年”がひしめき合っている。
1990年代後半から2000年代に生まれ育った子どもたちが魔裟斗をはじめとするスターに憧れて幼少期から格闘技を学び、アマチュアで充分な経験を積んだ上でプロの舞台に飛び出してきたのだ。高校生トーナメント・K-1甲子園の存在も、少年ファイターたちのレベルアップに拍車をかけたはずだ。
彼らの中には20歳そこそこ、あるいは10代でプロのトップ戦線で活躍する者も多い。8月1日、大田区総合体育館で開催された『BLADE』55kgジャパンカップにも、そんな“神童”たちが集まった。
さまざまな団体からトップ選手が集まり、ヒジなしルールで行なわれた立ち技トーナメント。最年長で25歳、10代が3人もいるという若き才能の争いである。しかも、優勝したのは最も若い那須川天心だった。まだプロデビュー1年の16歳である。
まだ16歳。だが、想像を超えた強さを秘める。
全世界アマチュアムエタイ選手権優勝など数々の実績を引っさげ、昨年7月にプロの世界へ。6戦6勝5KOという圧巻の戦績でRISE王者になった。
今回のトーナメントでも優勝候補の筆頭に挙げられていた那須川は、予想をはるかに上回る闘いを見せた。1回戦から決勝まで、すべてKO勝利で優勝を果たしたのだ。
その攻撃力は、まさに圧巻。といって、いわゆる“豪腕”タイプではない。準決勝の小笠原裕典戦では、自らロープを背負う格好で相手を誘い込み、絶妙のタイミングでカウンターの左フックを決めている。内藤大樹との決勝戦では、モーションの途中でミドルキックからハイキックに軌道を変える蹴りで最初のダウンを奪った。そうした“技あり”なダウンのすべてが「狙っていた」ものだという。
55kg日本最強を決めるはずのトーナメントは“那須川祭り”となった。繰り返すが、まだ16歳である。これからどこまで成長するのか想像もできない。自身が対戦を熱望するK-1王者・武尊との対戦が実現するかどうかも気になるところだ。