濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
16歳の那須川天心、連続KOの衝撃。
優勝して、気分はスーパーサイヤ人!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2015/08/09 10:40
内藤大樹との決勝戦を圧勝した那須川天心。まだまだ育ち盛りで……身長162cm、体重55kg。
「あぁ、天才って本当にいるんですねぇ……」
あまりにも圧倒的な優勝劇に、ある元選手が感服したような声をあげた。
「あぁ、天才って本当にいるんですねぇ……」
ただ那須川自身は、この優勝は「日々の努力の積み重ね」だという。彼を知る人間は「天心ほど練習する選手はいない」と口を揃える。那須川と対戦した選手の関係者は「技術があっても、線が細ければ太刀打ちできるんですけど、那須川は若いのに体も強いんです」と言う。その強靭な肉体は、まさに練習なくしては身につかないものだろう。
さらには、並外れた度胸も備わっている。那須川の試合には、大量の応援団が駆けつけるのが恒例だ。実は、応援団の存在はプレッシャーにもなりうる。地元での“凱旋試合”などで、声援を受ければ受けるほど「負けるわけにはいかない」という意識がマイナスに働いて動きが硬くなってしまう選手は少なくないのだ。だが、那須川は応援をそのままパワーにしてしまう。先述の関係者は、こう解説してくれた。
「やっぱりハートが強いですよね。それに応援され慣れてるっていうんですかね。子どもの頃から親や周囲に期待されて、その中でアマチュアの試合に勝ってきた。プロに上がっても、今さら緊張なんてしないんでしょう」
「イメージはスーパーサイヤ人です」
普通の選手なら決して打てないタイミングでのパンチ。「そこを攻めるか!?」という発想力と展開の見極め。大勝負でこそ力を出せる稀有なハートが那須川にはあるのだろう。
「これからも驕らず、しっかり努力してもっと上を目指したいです」
インタビュースペースでのコメントも堂々としたもの。唯一、高校生らしい笑顔を見せたのは金色に染めた髪について聞いた時だった。
「これは夏休み限定で(笑)。イメージはスーパーサイヤ人です」
那須川は、まさにスーパーサイヤ人級の強さを見せた。ひとつ違うのは、新学期が始まって髪を黒に戻しても、間違いなく強くなり続けるところだ。