オリンピックへの道BACK NUMBER
女子48kg級王座を巡る2人の戦い。
8月の柔道世界選手権で再び激突か。
posted2015/08/09 10:50
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
8月24日、カザフスタンで柔道の世界選手権が開幕する。
最大の注目は、女子の48kg級だ。出場する2人の日本代表がどのような結果を残すかが、リオデジャネイロ五輪代表争いに大きく影響を与える。ましてや、2人ともに世界でもトップクラスの実績、実力を秘める選手だ。お互い、強い決意で大会へ向かおうとしている。
代表の一人、近藤亜美は現在20歳。この数年で急成長を遂げた。
2013年に高校総体を制すると講道館杯で3位、グランドスラム東京では準決勝でロンドン五輪金メダルのサラ・メネゼス(ブラジル)に横四方固で一本勝ち。決勝でも世界選手権女王のムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)を破って優勝を飾り脚光を浴びた。
続く2014年、飛躍を遂げる。全日本選抜体重別選手権で初優勝し、世界選手権代表に選ばれると、初めての世界選手権で金メダルを獲得したのだ。
ジュニアの頃から武器としてきた寝技に加え、払い腰など立ち技の切れも増した上、勝負にこだわった駆け引きもできる。その戦いぶりは勢いで片付けられない、たしかな技量を感じさせた。
「目標はオリンピックの金メダルですから」
笑顔とともに、そうはっきり口にする近藤の快進撃は止まらないかのように思えた。
若い近藤の快進撃に待ったをかけた浅見八瑠奈。
それに「待った」をかけたのが浅見八瑠奈だった。
浅見は2010、2011年の世界選手権を連覇、ロンドン五輪代表争いをリードする立場にいた選手だ。だが、迎えたオリンピックシーズンの2012年5月、五輪代表選考対象大会の全日本選抜体重別選手権でまさかの初戦敗退を喫した。試合後に「1週間前から眠れませんでした」と打ち明けたように、重圧に屈した敗戦だった。有力視されながら、五輪代表を逃した。
その翌年の世界選手権の代表には選出されたものの、2位。その後、長期休養に入った。復帰したのは、2014年8月の全日本実業柔道個人選手権。3位に終わったものの、浅見はこうコメントした。
「まだオリンピックの舞台にだけ立てていません。オリンピックを目指すために帰ってきました」