野ボール横丁BACK NUMBER
清宮幸太郎、ついに甲子園見参!
驚くべき大物ぶりを見せた取材現場。
posted2015/08/08 13:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
あの松井秀喜が野球人生で唯一、足が震えたという高校1年夏の甲子園の第一打席。だが、早実の「怪物1年生」清宮幸太郎の言葉の中には、重圧のカケラも見当たらなかった。
試合後、お立ち台に上がった清宮幸太郎は大きく息を吸い込み、吐き出しながら言った。
「最高ですね。(甲子園は)格が違う」
清宮をひと目見ようと、午前8時開始の第一試合にもかかわらず、甲子園は4万8千人の大入り満員。こんなにも注目されていることを楽しんでいる選手は、あまり見たことがない。
「やっていて、気持ちよかった。空が青くて、アルプススタンドも『アルプス』って呼ばれるぐらいそびえていて。楽しかったです」
試合前、朝食のメニューを聞かれても、嫌な顔ひとつせず答えた。
「ご飯と、みそ汁と、お魚と、卵と……」
しかし、結果にはまったく満足していない。
「全打席ヒットを打つぐらいじゃないと」
ノーヒットで迎えた7回の第4打席。1死二塁から、地を這うような打球が一、二塁間を真っ二つに分割する。初回の3点以来、無得点が続いていた自チームに貴重な4点目をもたらした。球場がいちばんの盛り上がりを見せたシーンだったが、本人は塁上で3度、軽く手を叩いただけだった。
「1本ぐらい出なきゃ、ダメですよ」
全四打席、得点圏に走者を置いていたが、ボール球に手を出し凡フライに打ち取られるなどこの日は結局、7回の1安打だけに終わった。
「ぜんぜんダメ。しょうもないっスね。全打席ヒットを打つぐらいじゃないと」
4回、2死二、三塁の好機でセンターフライに倒れたときは、バットを叩き付けるような仕草を見せ、悔しさを露わにした。そのことを記者に突っ込まれると、おどけたように笑って謝罪した。
「すいません! 気をつけます!」
監督の和泉実は、この日の清宮をこう分析した。
「スラッガーの本能なんでしょうね。打ちたいという気持ちが強過ぎて、逆に打たされていた」