フットボール“新語録”BACK NUMBER
ドイツ2部で戦術革命が始まった!?
ラングニック、衝撃の“4-2-2-2”。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2015/07/29 11:00
プレーヤーとしてはプロになれなかったラングニックだが、指導者の経験は豊富。シュツットガルト、ハノーファー、シャルケ、ホッフェンハイムなどの監督を歴任。戦術に長けるため「プロフェッサー(教授)」と呼ばれる。
「チームをシンクロさせる」という監督業の真髄。
ボールとは反対側にいるサイドハーフとサイドバックへの要求も高い。布陣をコンパクトにするために、ピッチを縦に割った中央まで寄せることが求められる。
これを理解させるために、ラングニックの戦術書では、ピッチの縦半分のところに線が引いてあるそうだ。ボールと逆サイドにいるサイドハーフとサイドバックは、常にそこまで寄らなければならない。
イメージとしてはピッチの右上、もしくは左上の4分の1のエリアに全員が集まる感じだ。サイドの選手には、とてつもない運動量と速さが求められる。
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ラングニックは、キッカー誌のインタビューでこう説明した。
「私が目指しているのは、なるべく高い位置でボールを奪い、瞬時に切り替え、なるべく速くゴールに迫るサッカーだ。相手に攻めるチャンスを一切与えない。アリゴ・サッキは私に電話で『監督の仕事は、チームをシンクロさせることだ』と言った。選手全員が同時に同じ考えを持つようにするということ。この一言に監督業の真髄が凝縮されている」
極端で斬新な戦術だが、同時に普遍性もある。だからこそ、今までラングニックの下で鍛えられた選手たちに、高値がついてきたのだ。
ピッチ内だけでなく、移籍戦略も天才的。
ホッフェンハイム時代の教え子で言えば、100万ユーロで獲得したグスタボが1700万ユーロでバイエルンへ、800万ユーロで獲得したカルロス・エドゥアルドが2000万ユーロでルビン・カザンへ、そして今夏、元々400万ユーロだったフィルミーノが4100万ユーロでリバプールへと旅立った。フィルミーノの移籍金は、ブンデスリーガの新記録だ。
レッドブル・ザルツブルク時代にも、マネとカンプルの売却で2000万ユーロの移籍金をもたらしている。ピッチ内の戦術だけでなく、移籍戦略も天才的だ。
「私たちはこの選手は伸びると思ったら、他の人間がつけた値段より高い移籍金を迷わず払う。その後、間違いなく値上がりするからだ。だから誰も知らないような選手を狙い続けている。たとえば今夏にトルコから500万ユーロで獲得したDFのヌカンは、左利きで196cmあり、足が速い。プレミアが好きなタイプだ。ライプツィヒで経験を積めば、きっとプレミアが大金を払ってくれるだろう」
今季、ライプツィヒはドイツ2部の優勝候補の筆頭にあげられている。
「私たちは若くて、モダンで、魅力的なチームだ。本気で楽しいサッカーを目指している」
1年後、ドイツ1部への昇格を果たし、新たな戦術がブンデスリーガを席巻するかもしれない。