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熱いサポーターと、熱い男の強い絆。
優勝請負人・那須大亮が語る浦和愛。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/06/23 11:30
優勝を懸けた神戸でのアウェー戦に向けて選手を送り出す、前節の埼玉スタジアムに詰め掛けた浦和サポーターと、それに手を振って応える那須大亮。
「自分の性格が浦和に合っているなと感じますね」
そしてもう一つ、那須を支え続けたものがある。それが、サポーターの存在だ。
那須自身がチームメートから「那須さんの周りは温度が高い」と冗談を言われるほどの熱い男だが、浦和のサポーターも負けじと熱い。類は友を呼ぶとでも言うべきか、その相性は最高である。那須には、浦和のサポーターについて忘れられないエピソードがあるという。
昨シーズンの夏、出場停止になった那須は試合を観戦するために、自分の車で埼玉スタジアムへ向かった。そこに見えてきたのは、雨が降る中で一生懸命に自転車をこいでスタジアムへ走るサポーターたち。
「すごくジーンとくるものがありましたね。やっぱり、この人たちのために頑張らなくてはいけないし、レッズですべてを捧げたいと思えた」
「自分で言うのもどうかと思うけど、自分の性格が浦和に合っているなと感じますね」というサポーターとの関係については、こんな言葉で語る。
「最近、給水のときなんかにちょいちょいスタンドを見るんですけど、すごく必死で応援してくれているし、気持ちとか勝ちたい思いが伝わりますよね。今までも1試合を大事にして戦ってきたけど、浦和に来て1試合の重みをさらに感じるんですよ。ウォーミングアップのとき、最初に浦和レッズのコールをしてくれるじゃないですか。あれでもう、背中にビンビンくるんですよ。すごいサポーターの下でやれているなって幸せを感じますよね」
神戸戦ラスト10分、「We are REDS!」の声が。
熱い声援と強い思いは、時として大きなプレッシャーに変わる。過去、浦和に在籍した中にはそうしたものを受け止めるのに苦労した選手もいた。しかし、那須はその思いを感じ取り、ダイレクトに自分の力へと変える。浦和の水が合っている、ということなのだろう。
優勝を決めた神戸戦も、そのサポーターとの絆と後押しを大きく実感したゲームになった。首尾よく先制したチームだが、残り15分で宇賀神友弥が退場処分になり、10人になる。そして、84分には同点ゴールを決められた。自力で優勝を決めるためには、引き分け以上の結果が必要なゲームだ。死に物狂いで神戸の猛攻をしのぐチームに対して、ゴール裏から地面を揺るがすほど大きな「We are REDS!!」のコールが鳴り響いた。
「みんなすげえ! って感動しましたよ」
その瞬間のことを、那須はこう振り返る。追加タイム6分を含めた残り10分間、神戸はゴール前に迫り続けたが、浦和が失点しそうな気配は全くなかった。まるで、ゴール裏から響く声と思いの塊が、ゴール前に壁を作ったかのようだった。そして、歓喜の瞬間を告げるホイッスルが鳴る。那須はゴール裏へ向かってガッツポーズをしながら、胸のエンブレムに手を当てた。
プロ入りから5チーム目、31歳にして辿り着いた浦和の地は、那須にとって約束された場所だったのかもしれない。33歳になった今も、「全てにおいて努力して成長して、もっと大きくなってやろうと思っている」と、あくなき向上心を語る。狙うのは、2ステージの完全制覇とチャンピオンシップを勝ち抜いての年間王者の座だ。スタジアムが赤く染まり、大きな声援が響けば響くほど、背番号4は輝きを増しながら存在感を放つだろう。