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米ツアーで「前王者」が受ける歓待。
松山英樹のロッカー、旗、お寿司!? 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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posted2015/06/15 10:50

米ツアーで「前王者」が受ける歓待。松山英樹のロッカー、旗、お寿司!?<Number Web> photograph by AFLO

米ツアーにおいて、前年王者というのは想像を超えるリスペクトと歓迎を受ける。この重圧と歓待に浮き立たずにプレーしなければ、連覇の偉業は成し遂げられない。

歓迎会、歴代王者の旗、記念碑にも名前が。

 大会開幕の2週間前、松山は当地で行なわれた“メディアデー”に参加した。地元媒体を中心とした報道陣を相手に公式会見に出席。数時間前にはそれに先んじて熱烈な歓迎を受けていた。

 ニクラウスのお膝下のひとつである、オハイオ州中央部ダブリンにはおよそ2000人の日本人が住み、同州の中で最も多くの邦人を抱える地域。松山が所属契約を結ぶレクサスはトヨタ自動車のブランドだが、当地にはホンダ自動車の工場、関連企業が多くある。

 松山はその会で現地のコミュニティ、セントラルオハイオ日米協会(JASCO)から感謝状を贈られた。在デトロイト日本国総領事らも参加した異例のイベントである。松山の米ツアー初勝利は、当地の日本人にも大きな勇気を届けるものだったのだ。

 トーナメントウィークに入ると、松山も普段とは違う雰囲気を少なからず感じていた。いや、感じざるを得なかったという方が正しい。

 路上には歴代王者の画像があしらわれた旗が並び、チャンピオンの名前が刻まれた記念碑の一番端にも松山の名前。ギャラリーの入場が許された月曜日には、午後2時過ぎと遅くから最後の組で練習ラウンドを開始したが、20人近くのギャラリーが付いて歩き、サインや写真撮影のチャンスをうかがっていた。

自前で「MATSUYAMA」とシャツに入れた熱狂的ファンも。

 大会初日、ロープの外には珍しい光景があった。オハイオ州在住の女性、サンドラ・パークさんは恋人とコースに来場。彼女が着ていた、大会の黄色いシャツの背中には緑の字で「MATSUYAMA」の文字が刻まれていた。

 近所のスポーツグッズショップで頼んで、自分でアルファベットを入れたというオリジナル。1文字50セント、全部で4.5ドル。腕はタトゥーだらけのこのカップルは、1年前に松山の虜となった、紛れもない熱狂的ファンだった。パークさんは、松山と一緒に回っていた母国の人気選手、フィル・ミケルソン、リッキー・ファウラーを横目に言った。

「ファウラーは……うーん、2番目ね。(松山が)日本人だとか、そういうことはあまり関係ないわ。世の中にはいろんな音楽や文化があるように、色んな選手を好きであっていいはずよ。とにかく、彼はここで勝ったんだから」

 期待と重圧は隣り合わせ。

「予選落ちしたらどうしよう……」

 若き怪物も、そんな空気を全身で感じてプレーした。結局大会連覇はならず「この会場ではタイガー(ウッズ)しかやっていないんで、やりたいなと思っていた。残念」とこぼしたが、連日上位で戦って5位で終えたのだから、パークさんもある程度は満足してくれていると信じたい。

【次ページ】 日本人王者のためにビュッフェにお寿司を用意。

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