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錦織圭が全仏初戦で“凡戦”を演出!?
ピークを大会2週目に持ってくる理由。 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiromasa Mano

posted2015/05/25 11:30

錦織圭が全仏初戦で“凡戦”を演出!?ピークを大会2週目に持ってくる理由。<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

昨年は故障が癒えぬままに初戦敗退を喫している全仏。「いい準備ができました」と大会前に語った錦織に、大いに期待したい。

錦織はマチューの捨て身のプレーへ冷静に応えた。

 2度のブレークで3ゲーム連取。

 観客が沸き、スザンヌ・ランランのスタジアムに大きなウェーブが起きた。

 「(相手の)リスクを負ったショットが入ってきた」と錦織。相手の捨て身のプレーを警戒する一方で、「続くとは思わなかった」と冷静さも失っていなかった。

 次の第6ゲームで錦織がすかさずブレークバック。その後はスコアの上では一進一退だったが、主導権は錦織が握っていた。

 マチューは、なんとかリズムを変えようとして、バックハンドのダウン・ザ・ラインなど、リスクを負ったショットをさらに増やしていた。

 一方の錦織には、リスクを冒して攻める理由は何もない。しっかりハンドルを握り、制限速度を守って車を走らせれば、間違いなくゴールを切れるという見込みがあったはずだ。

 ランキング5位の錦織が堅実に試合を進め、現在123位と全盛期をすぎたマチューが、リスキーなプレーを強いられていた。そこに波乱が生じる余地はきわめて少なかった。

地元贔屓の熱気を徐々に削っていった錦織。

 マチューの思い切りのいいショットがライン上に決まる。その瞬間はスリリングだが、この好ショットはミスと背中合わせなのである。少しでも体勢が崩れれば、ショットの精度が落ちる。すなわち、凡ミスの連発。マチューに肩入れする観客の高揚は、たちまち冷えた。

 錦織が「少し油断すれば負ける可能性もある」と警戒していたマチューとの初戦は、凡戦の様相を見せ始めた。

 第2セットは錦織が6-5からブレークに成功し、7-5。2セット連取で優位に立った。

「セカンドセットを取れたのは大きかった」と錦織。第3セット、飽きっぽいフランスの観客の応援に、前のセットほどの熱っぽさはなかった。

 錦織はいきなり5ゲーム連取。相手に1ゲーム与えただけでこのセットを奪い、ストレート勝ちで1回戦を突破した。

【次ページ】 ピークを第2週に持ってくるための大事な“凡戦”。

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