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久しぶりに現れたスター、浅野拓磨。
永井謙佑とは異なるスピードの質。
posted2015/05/19 10:50
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
彼が走るとサポーターの歓声は2オクターブ上がり、スタンドが一気に盛り上がる。久しぶりにスタンドを沸かせ、ピッチで目立つ若武者が出てきた。
サンフレッチェ広島の浅野拓磨だ。
目を引くのは、なんといってもそのスピード。四日市中央工高時代に50m走を5秒9で駆け抜けた駿足は、急加速して一気にトップスピードに入る。ロンドン五輪でスピードスターとしてブレイクした日本代表候補の永井謙佑もスピードが持ち味だが少し質が違う。永井のスピードは動物に喩えるとガゼルのようなスプリント系だが、浅野はスピードプラスフィジカルの強さがミックスされ、鍛えられた競争馬のような迫力がある。
そのスピ-ドは、日本代表の再構築まっただなかのハリルホジッチ監督にも魅力的に映ったようだ。サイドの選手には、まず縦へのスピードと突破力が求められる。浅野の足はその条件をクリアしているからだ。
「スピードは誰にも負けない自信があります。裏への仕掛けやボールを奪った後の縦に速い攻撃も普段から意識していますし、それが自分の特徴です」
浅野は、自信に溢れた表情でそう言った。
ゴールが決められない時期が続いても、折れない心。
ハリル構想ではサイドだが、浅野の今シーズンの主戦場はFWである。1トップの佐藤寿人と交代して途中出場することが多く、浅野自身もサイドアタッカーというよりは“点取り屋”としての意識が非常に強い。
「高校の時も常にゴールを意識してプレーしてきましたし、それは今も変わらない。昨シーズン、チャンスを外しまくって1点も取れない時でも自分が決めるんだっていつも思っていました」
めげない、折れない心はFWに必要な要素だが、実際に広島に入団してから2年間、浅野はリーグ戦でゴールを決めることができなかった。