ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
ペップの策、バルサの才能に屈す。
次々繰り出した戦術と、皮肉の賛辞。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byAFLO
posted2015/05/13 16:30
かつての師弟は敵として戦い、そしてグアルディオラはメッシに敗れた。リベリー、ロッベンがいたら展開は違ったのだろうか……。
王者の面目を保つためだけの数分間。
リベリーとロッベンの不在により、個人の打開力で数的優位をつくることも、スピードをいかしたカウンターもバイエルンの攻め手には、ない。攻撃に多くの人数をかける「質より量」に活路を求めるしかなかった。それには敵陣深く押し込み、後列の攻撃参加をやりやすくする必要がある。ペップがバルサとの決戦でいつも以上にポゼッションへのこだわりを口にしていたのは、そうした事情もあったはずだ。
そこでバルサにポゼッションを許せば、押し込まれることはあっても、押し込むのは難しい。だからこそ、前から圧力をかける敵陣でのプレッシングが不可欠だった。
実際、後半の2ゴールは思惑どおり、バルサ陣内でボールを奪い返したところから生まれている。敵陣でのポゼッションとプレッシングがコインの裏表のように機能したわけだ。
それはしかし、事実上の勝負付けが済んだ後である。残りの時間は、ドイツ王者の面目を保つためにあった、と言ってもいい。ポゼッション率(公式)は第1レグと第2レグ、いずれも53%を記録。本家のバルサを僅差で上回ったものの、バイエルンが勝つためには、それ以上の「差」が必要だった。その差を広げる上で足りなかったのは、知恵以上に「人」だったか。
バルサに対するペップの皮肉混じりの賛辞。
クラブの教典(ポゼッション原理主義)の再解釈を試みて、強さの次数を一つ繰り上げた感もある新生バルサが、大きくビッグイヤーへ近づいた。果たして、もう一つのファイナリストは驚異のトライアングル(メッシ、スアレス、ネイマール)を止められるだろうか。大きく変貌を遂げた古巣に対するペップの賛辞が、やけに記憶に残って仕方がない。
「カウンターアタックという点では、世界最高のチームだと思う。いまのバルサは」