ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフ界の「中国経由アメリカ行き」。
隣の青い芝を“踏みに行く”男たち。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2015/05/12 10:40
16歳でゴルフを始めるという遅いスタートにもかかわらず、中国で存在感を増しつつある呉阿順。アメリカツアー、そしてリオ五輪を騒がせる存在になるか。
中国がリオ五輪に向けて力を注ぐスポーツ政策。
中国が国家レベルで力を注ぐスポーツ政策、ゴルフ教育の見事な成功例。プロジェクトの先にはもちろん、リオデジャネイロ五輪でゴルフが112年ぶりに正式種目に復活するという事実がある。
一部の好景気と大胆な政策がものを言い、呉が優勝した大会以外にも欧州ツアーのトーナメントが年間3試合中国で行なわれている。少なくとも資本の面では、アジアのゴルフをリードする存在だ。
しかし、日本の選手たちも漫然としているわけではない。チャンスをつかもうとしている若手もいる。
世界最高峰のレベルを誇る米ツアーは、2014年、中国を舞台とした新ツアー「PGAツアー・チャイナ」を発足させた。同ツアーの成績優秀者は、翌年の米下部ウェブドットコムツアーへの出場権を獲得する。松山英樹、石川遼の主戦場であるレギュラーツアーを頂点とするピラミッド構造をより強固にするための一策だ。
日本ツアーの出場権を失い、中国へ。
2年目を迎えたこのPGAツアー・チャイナに今年、日本人が複数名参戦している。
石川が卒業した杉並学院高在学中にプロ転向した19歳の伊藤誠道は、昨年日本の下部ツアーで戦ったが、'15年の日本ツアー出場権を争う年末の予選会で敗退した。年明けに行なわれたアジアンツアーの予選会も失敗。
「もうダメだ。来年は無職だ……」
そんな時に耳にしたのが、中国に残されたチャンスだった。
「本当に急遽、飛んでったんですよ。でも3日間はボロボロで……。最終日のバックナインで32を出して、なんとかなりました。『これで職場が確保できる』って」
2月に行なわれた4日間の戦いを伊藤は28位で終えた。佐藤えいち、白倉渉平らが獲得した上位20人のフルシード権は逃したが、優先順位でその下の「テンポラリーメンバー」の資格を確保した。