セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
アンデルソンとラツィオの連勝街道。
ネイマールの親友、あだ名は“FA7”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/04/15 10:50
ラツィオはサントスからアンデルソンを獲得する半年前に、アンデルソンと契約直前までこぎつけて破談になった経緯がある。それでも諦めなかったフロントの目は確かだった。
フォーメーション変更でスピードとドリブルがさらに輝く。
昨季9位に沈んだラツィオの下馬評は低かった。昨夏にオランダ代表DFデフライとセルビア代表FWジョルジェビッチ、イタリア代表MFパローロを加えたものの、補強の効果は未知数で、王者ユーベを筆頭とする3強には遠く及ばず中位止まり、というのが大方の予想だった。
ミランとの開幕戦に1-3で敗れた後、首都ローマからわざわざサン・シーロにやってきた地元紙のラツィオ番記者が「やはり(開幕ゴールを決めた)本田を獲っておくべきだった」と真顔で嘆いていたことを思い出す。
しかし開幕4節で3敗を喫した後、ラツィオは地道に挽回を目指した。しばらくはEL出場圏を出たり入ったりしていたが、前半戦を折り返した2月上旬、チェゼーナとジェノアに連敗。6位に後退し、仇敵ローマとの勝ち点差は最大の12にまで広がった。
この危機に指揮官ピオリの行った戦術変更が、左膝故障から復帰したばかりのアンデルソンが爆発する契機となった。
それまでの3トップ体制から、4-2-3-1の1トップにFWクローゼが入り、アンデルソンはパス巧者のMFマウリとMFカンドレーバとともに2列目に入る形への変更。これでアンデルソンのスピードとドリブル能力がより生かされるようになり、チーム全体の攻撃力は格段にアップした。
8連勝中、失点はわずか1と守備陣も安定。
バレンタインデー翌日の23節ウディネーゼ戦から、連勝街道は始まった。5つ目の白星にあたるトリノ戦でナポリを追い抜き、ラツィオは単独3位へ浮上。戦々恐々のローマがドロー地獄に苦しむ間に、ラツィオは着々と勝ち点3を積み重ね、ついに8試合を残す時点でライバルを逆転したのだった。
連勝をもたらした得点力もさることながら、8連勝中に喫した失点はオウンゴールを除けばFWディバラ(パレルモ)に許した1点のみ。守備陣が再整備され、攻撃陣がベストパフォーマンスを発揮するラツィオには敵将も脱帽する他ない。
大敗したエンポリ監督サッリは「彼らは地ならしローラーだ」と分厚い攻撃のスタイルに観念し、3失点で7連勝目を許したカリアリの将ゼーマンは「ラツィオこそ今季のベストチーム。ローマより確実に強い」と感嘆した。