セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
アンデルソンとラツィオの連勝街道。
ネイマールの親友、あだ名は“FA7”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2015/04/15 10:50
ラツィオはサントスからアンデルソンを獲得する半年前に、アンデルソンと契約直前までこぎつけて破談になった経緯がある。それでも諦めなかったフロントの目は確かだった。
親友ネイマールとは反対に、物静かな人柄。
ラツィオの躍進は、若武者アンデルソンの急成長を抜きにしては語れない。だが、今月15日でようやく22歳になるアンデルソンは、移籍1年目の昨シーズン、内気な性格が災いして、新天地イタリアへの順応に苦労していた。
同じ'13年夏に欧州へ渡った、サントス時代からの親友FWネイマール(バルセロナ)と違い、派手な露出を好まず信心深いアンデルソンは、迷走した2年目の監督ペトコビッチと、途中登板のベテラン指揮官レーヤの目に留まらなかった。セリエAでのデビューシーズンは、13試合出場、0ゴールという寂しい結果だけが残った。
2年目の今季、選手の特性を生かす新監督ピオリに継続して起用機会を与えられ、アンデルソンはようやくイタリア流の戦術主義に慣れ、ゲームのリズムをつかんだ。
世界一のお手本が身近にいたことも幸運だった。
「自分の好調があるのは、ミロス(ラフ・クローゼ)の姿をいつも見てきたから。いつも最初に練習へ来て、いつも最後に帰るのは彼だ。ミロスこそ真のプロだよ」
ブラジルW杯でW杯の個人最多得点記録を塗り替えた偉大なストライカーが、36歳の今も練習へ真摯に取り組む姿に感銘を受けたアンデルソンは、チーム第一を貫きながらゴールへ向かう姿勢をさらに強めた。
「最低でもCL出場権は死守する」
昨年12月の14節パルマ戦で待望のセリエA初ゴールを決めると、1月の左膝故障と母国ブラジルでの実父逮捕という二重のショックを乗り越え、先月中旬の27節トリノ戦で今季2度目のドッピエッタを達成。C・ロナウドの再来と囃し立てる周囲に対し「褒め過ぎ」と謙遜する“FA7”は、クラブ歴代2位に相当する8連勝記録の達成にも、浮ついたところはない。
「歴史が始まるのは、むしろここからだ。最低でもCL出場権は死守する」
“最後のEL出場枠に滑り込めれば今季は上出来”という、ラツィオに対する開幕前の予想は完全に覆された。