スポーツのお値段BACK NUMBER
黒田博樹の年俸が、なぜ5分の1か。
改めて日米の野球市場を考える。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/04/08 10:50
黒田博樹が登板する日、マツダスタジアムは真っ赤に染まる。視聴率も地元では30%を越えた。この事態を“奇跡”のままにせず、再び起こるように仕組みを整える必要がある。
黒田の商業的な“価値”はいくら?
ここから分かることは、黒田投手はこの9人の中でも年齢は平均以上ながら、200イニング近くを投げ抜く体力があり、かつ安定した成績を残すことが期待できる投手だということです。こうして並べて見てみると、黒田投手に用意される年俸額は、メジャーにおいては妥当なラインだと言えそうです。
一方で、黒田投手に商業的な側面から見た“価値”はどの程度あるのでしょうか。
商業的価値を測るには、球団にもたらすスポンサー収入やグッズ収入への貢献度を数値化する必要がありますが、「黒田投手がいることを理由にスポンサーになる企業がどれだけいるか」「黒田投手のレプリカユニフォームがどれだけ売れたか」などに関する詳細なデータがないため、これらの点から価値を推し量ることは困難です。
黒田の集客力は田中将大と比べても……。
そこで唯一、明確な数字が把握できる観客動員数を確認してみましょう。
昨シーズン、ヤンキースはホーム80試合で平均4万2520人の観客を集めました。黒田投手の登板日のデータが残っている平均観客動員数は4万2911人(17試合)。ちなみに田中将大投手の場合は4万3393人(10試合)で、これは平均より約900人、黒田投手より約400人多い数字でした。誤差の範囲に収まるデータかもしれませんが、田中投手は10試合中6試合が土日のゲームで、黒田投手は土日の登板は17試合中4試合のみだったこと、さらに田中投手がメジャー1年目で注目度が非常に高い存在だったことなどを考え合わせると、ベテランの黒田投手が発揮した集客力はゴールデンルーキーに引けをとらなかったとも言えます。
何より、途中離脱することなくローテーションを守ったことはチケット収入への貢献度が高かったとも言え、経済価値の側面からも十分評価に値するでしょう。
それではなぜ、メジャーで20億円クラスの価値と評価される選手が、日本では4億円の年俸に留まっているのでしょうか。そこにはもちろん、広島カープという堅実経営を旨とする球団の特色も影響していると考えられます。事実、4億円という年俸はカープにとっては球団史上最高額なのです。