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「世界大会より緊張感がある」試合。
伊藤華英が語る、全日本水泳選手権。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2015/04/06 10:30
リオ五輪で日本のエースとして複数のメダルが期待される萩野公介。日本選手権では200、400m個人メドレーなど4種目にエントリーする。
「空気が重いというか、独特の緊張感ですよね」
「空気が重いというか、独特の緊張感ですよね」
日本選手権を何度も何度も経験してきたスイマーならではの言葉であり、選考を兼ねた大会の重みが伝わる。
そして、自身、その雰囲気を味わってきたからこそ、出場する選手たちを思う。
「頑張っていない選手なんていません。みんなが頑張っている中、それでも勝たないといけないので、観ている自分が緊張しますね。どうしてもこれまで国際大会で結果を残してきた選手への関心が高くなりますが、出場するみんなの泳ぐ姿を観てほしいというのがささやかな願いです」
その上で、今大会で注目すべきポイントをあげた。
「今、世代がかわってきているんですね。萩野(公介)選手たちがだんだん中心の歳になってきて、ロンドン五輪で3個のメダルを獲得した入江陵介選手たちが上の世代になってきています。さらに、萩野選手たちの下の世代も速くなってきています。中学生や高校生たちがどれくらい伸びやかな泳ぎができるかは注目ですね」
「私が現役だったときはライバルに恵まれていた」
昨年のアジア大会で金4、銀1、銅2と計7個のメダルを獲得した萩野をはじめ男子の活躍が目立つ今日、女子の中からの台頭も期待したいところだ。
また、若い世代の成長は、世界での日本の位置をさらに押し上げ、確立することにもつながる。種目によって違いはあるが、時代を経るにつれ、全般に日本のレベルは高くなってきた。ロンドン五輪でのメダルラッシュはその象徴と言えるかもしれない。国際大会で「メダル獲得は当たり前」と捉えられるまでに至ったのが今日だ。
「例えば400m個人メドレーに萩野選手、瀬戸大也選手と2人もメダルを目指せる状況にある選手がいるように、高いレベルの選手がたくさんいます。私が現役だったときはライバルに恵まれていた。ライバルがいたから『やってやる』と強気で向かうことができて、強くなれたと思います。レベルが高いので大変ですが、今の選手たちも切磋琢磨できたら伸びていけるし、より日本の水泳界が世界で確固たる地位を築けるんじゃないかと思っています」