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判官贔屓の観客が作る強者の重圧。
松山東の1勝を生んだ“残酷な心情”。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/03/27 12:00

判官贔屓の観客が作る強者の重圧。松山東の1勝を生んだ“残酷な心情”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

二松学舎大付を破った松山東は、28日の第3試合で東海大四と対戦する。観客が再び松山東に味方する可能性は高いが、再びの下克上は起こるのだろうか。

「最強の相手も困るが、一番弱い相手はもっとイヤ」

「最強の相手と当たるのも困りものだが、一番弱いといわれる相手と対戦するのは、もっとイヤなものですよ……」

 以前、ある有名な監督さんがこんな“本音”をこぼしてくれたことがある。

「対戦相手が弱いといわれる相手で喜んでるのは、何も知らない地元のファンとOB、それに学校の人たちだけ。私は選手達を、まずいましめることから始めるんですよ」

 弱い相手と対戦する時、強豪校であればあるほど、球場すべてを相手にして戦わねばならないことを知っているのは、「それ」を実際に体験したことのある大人たちだけである。

 かつて舞の海秀平というお相撲さんは、横綱よりも人気があった。

 170cmの上背を逆に「利」として活用しながら、技という技を総動員して、最後は自分の倍ほどの巨漢を土俵に沈めてしまう。

 関脇ぐらいまでいったのかと思ったら、最高位は小結であった。そのわりに“強いイメージ”があったから、余計に判官贔屓の日本人の胸をいたく揺さぶったのだろう。

 勝てそうもない者が、負けそうもない相手をなんとひっくり返してしまうシーンを待ち望む。ある意味とても残酷な心情が、日本人の心の中には潜在している。

強者がコケる理由は、「勝ち方」が頭をよぎるから。

 私たちはそれを口に出しては決して表さないが、その思いは行動に意外なほどわかりやすい形で表れてしまうことがある。それが今回の場合は、松山東のプレーに対する力強い拍手だった。外野スタンドを見渡すと、二松学舎側のライトポール付近には誰もいないのに、反対のレフトポールのあたりには、観客がビッシリと密集していた。もっとゆったり見られる場所もあるのに、少しでも松山東応援団のアルプスに近づきたいとでもいわんばかりのその様子に、ついつい微笑んでしまったものだ。

「実力差が開いていると思われる相手と……」

 こういう言い方は回りくどいので、失礼を覚悟で「強いほう」「弱いほう」という表現にさせていただくと、「強いほう」が時としてコケる理由の1つに「勝ち方」というやっかいなものが存在するのは事実だと思う。

 ユニホームに汚れひとつなく、綺麗に勝っても1勝。息を切らせ、ドロまみれになってやっと勝っても同じ1勝。頭ではわかっているのに、強いほうに「楽な勝ち方」というヤツが頭にチラついてしまうのは、人間の面白いところであろう。

【次ページ】 コールドを目論んだ側が、逆にコールド負け。

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