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超マイペースなニューヒロイン。
女子マラソン、前田彩里とは何者?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byKyodo News
posted2015/03/09 11:35
2013年に他界した父の遺言は「五輪に行け」。昨年は3回しかできなかった腕立て伏せが、今年は15回までできるようにと……まだまだ伸びしろが多い逸材。
「マラソンのための練習をやったことがないんです」
そんな地道な努力が、着実に結果に結びついていったのだろう。今年1月、駅伝シーズンを終え、アメリカ・アルバカーキでの合宿に旅立つ直前、前田はこう語っていた。
「私、マラソンのための練習をまだやったことがないんです。実は今度が初めてのマラソン合宿になるんですよ。実業団に入ってからは、みんなと同じ練習をずっとしてきたので。まだ40km走とか一度もしたことなくて。
だから本番はめっちゃ怖いですよ。でもワクワクしています。怖さはあるけど、不安はあまりないかな。まぁ……失敗してもいいやっていう(笑)。まだまだ、これからですよ」
つまり、今回の名古屋が本格的な準備をして臨んだ初めてのマラソンなのだ。そこでいきなり好結果をたたき出した。
昨年の大阪で活躍し、注目選手として重圧もあるなかで難しい状況だったはずだが、悲壮感やプレッシャーを感じさせないところが前田の魅力。その天真爛漫なメンタルと、冷静に自分の立ち位置を分析する力が共存しているところが彼女の強みなのだろう。
今大会の結果を受けて、8月に北京で行なわれる世界陸上代表の座もほぼ当確となった。レース後の一言が、なにより彼女の強さを物語っている気がする。
「マラソン、楽しいなって思いました」
壁を壁と思わない、マイペースなニューヒロイン。世界の舞台でどこまで飛躍してくれるだろうか。