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日本が呼べる限界は「過去の名将」!?
代表監督をJの実績で選ぶという話。 

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北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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posted2015/02/19 10:50

日本が呼べる限界は「過去の名将」!?代表監督をJの実績で選ぶという話。<Number Web> photograph by AFLO

2014年W杯でブラジルを最後まで苦しめ、その勇敢な戦いぶりに国内で一躍ヒーローとなったチリのホルヘ・サンパオリ監督。やはり国内リーグでの実績は重要?

日本の提示する条件では「過去の名将」しか迎えられない。

 金銭面の問題はどうか。日本の提示する契約金は悪くない。名声のある指導者には2億円強を投じる用意がある。もっとも超大国では3億から5億円が相場で、欧州のメガクラブになるとケタが変わってくる。日本の資金力は大物確保の決定打とはなりにくい。

 さらに大きく異なる言語、文化、生活習慣、気質などの問題もある。特に「気質の違い」から生じる問題点を整理し、ムダなく強化を進めるには相応の時間がかかるだろう。日常的に選手たちと深く関わるクラブ監督とは異なり、離合集散を繰り返す代表監督ともなれば、なおさらだ。おいそれと片付く問題ではないだろう。

 こうした難しい条件の下でブランド志向を貫けば、釣れる相手が「過去の名将」に絞られていくのも止むを得ない。彼らへの投資が当初の期待を下回る結果となっている以上、選択肢の枠を広げてもいいのではないか。

 それがJリーグで実績を残した指導者――「無印良品」というわけである。彼らの多くは、ブランド品に欠落した「ニッポンへの理解」を深めた状態で仕事に取り組めるはずだ。そのアドバンテージは想像以上に大きいのではないか。

ブラジルW杯で成功したチリの成功例。

 国内市場に選択肢を求めた成功例として興味深いのは、昨年のブラジル大会で16強入りを果たしたチリだ。アルゼンチン出身の指揮官ホルヘ・サンパオリを抜擢。欧州の市場で知られた存在ではないが、チリの古豪クラブ、ウニベルシダ・デ・チレを率いて国内三冠を達成。その実績を買われ、代表監督のポストに迎えられている。

 主力の多くは欧州組だったが、クラブで実績を残した戦術を迷わず代表チームに転用し、成功を収めた。チリ人の扱い方を心得ていれば、選手たちの「格」は大きな問題にならないということの証左だろうか。さらに「短期の強化」にも適していると言えるかもしれない。

 日本人の扱い方をよく知り、ピッチ内における長所と短所を見極め、それをチームづくりに落とし込める手腕さえあれば、国籍は問題じゃない。外国人でも、日本人でもいいはずだ。むしろ、吟味したいのは、実績の中身だろう。

 ポイントは「何を」やり遂げたかではなく「どうやって」やり遂げたか。その見極めが「次期監督に求める条件」と密接にリンクするからだ。じゃあ、その条件とはいったい、何なのか――。そのお話は次回ということで。

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