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日本が呼べる限界は「過去の名将」!?
代表監督をJの実績で選ぶという話。 

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北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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posted2015/02/19 10:50

日本が呼べる限界は「過去の名将」!?代表監督をJの実績で選ぶという話。<Number Web> photograph by AFLO

2014年W杯でブラジルを最後まで苦しめ、その勇敢な戦いぶりに国内で一躍ヒーローとなったチリのホルヘ・サンパオリ監督。やはり国内リーグでの実績は重要?

ザックの「実績」の賞味期限はどうだったのか。

 どうも、そんな疑念が渦巻いてしまう。いや、必要だ――という意見を尊重した場合、さらに問いかけたいことがある。世界レベルの実績に関する「賞味期限」をどう考えるのか。例えば、ザックの信用に足る実績(イタリア・セリエAでのタイトル歴)は'90年代のものであり、ゼロ年代ではこれという結果を残していない。

 戦術やフィジカルなどの進化や発展が著しい現代において、約10年のブランクは実績の「期限切れ」や手腕の「再検査」を警告していないか。気になるところでしょう。

 ザックについて言えば、ワールドカップという短期決戦のマネジメントに関する「バグ」もいくつかあったように思う。日本をベスト16へ導いた日韓大会のフィリップ・トルシエや南アフリカ大会の岡田武史は「欧州リーグの実績」を残していない。

 しかしながら、両監督ともフランス大会で采配をふるった戦歴があった。どちらもグループステージ敗退ですが。その苦い経験を「2度目の挑戦」で生かしたという見方ができるかもしれない。さらに、もう一つのアングルがある。

ヒディンクの韓国での成功は、2つの特殊事情があった。

 欧州リーグの実績か、Jリーグの実績か――。

 過去2回の監督人事で「Jリーグの実績」は選考基準にカウントされていない。あくまでもトップレベルの実績にこだわっていたからだ。こうしたブランド志向の成功例としては、2002年の日韓大会で韓国をベスト4へ導いたオランダの名将フース・ヒディンクの名が挙げられる。ただし、当時の特殊な背景を理解しておきたい。ポイントは「特権」と「契約期間」だ。

 まず「特権」とは本大会のホスト国に認められたワールドカップ・アジア予選の免除である。これにより、目先の結果にとらわれることなく、強化に専念することができた。

 次に「契約期間」だが、こちらは約1年半だった。アジアの国々が欧州のマーケットで引きのある指導者を留めておけるのは「2年が限度」とも言われる。それ以上の歳月を費やせば、巨大市場で需要がなくなる恐れがあるからだ。そうかといって2年契約では就任早々アジア最終予選が始まるため、大胆な強化方針を採りにくい。そこが、はるか彼方の「未知の国」で指揮を執る場合のネックになるわけだ。

【次ページ】 日本の提示する条件では「過去の名将」しか迎えられない。

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