フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
町田の引退、羽生緊急手術……。
世界選手権での日本勢の展望は?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2015/01/14 10:30
「スポーツ選手のセカンドキャリア問題に取り組む」「フィギュアスケートをスポーツマネジメントの領域で考察する」という説明で自らの今後を語った町田。
リンクへ黙祷を捧げた町田樹。
演技終了してリンクを上がる前に、いつも通りかがんで片手で氷に触った。この習慣は「感謝の気持ち」を表現しているのだという。そして氷を下りると右手を胸に当てて黙祷を捧げるように数秒間、目を閉じた。
「何も思い残すことなく誇りを胸に、堂々と競技人生に終止符が打てます」この翌日、町田はそういい残して21年間続けてきたスケート競技に別れを宣言した。
町田は体力的、能力的にまだまだ成長していける可能性を持った選手であるだけに、もう少し続けて欲しかった。せめて今シーズンを最後まで滑り、世界選手権でもう一度、「第九」に挑戦してくれていたら。これは筆者だけでなく、すべてのファンの思いではないかと思う。
だが日本で1年の締めくくりとして演奏される「第九」という作品を選んだ時点で、年末の全日本選手権が最後の舞台となる可能性を、心のどこかで温めていたのではないだろうか。
思い残すことはないという町田の気持ちの中で、この「第九」が完成作品になったのかどうか、わからない。だが今となっては私たちにできるのは、早稲田大学大学院にてセカンドキャリアに向かって突き進みたいという彼の思いを尊重して、本人が希望するように静かに見守ることだけである。
次々と去っていったトップ選手たち……。
この過去1年間で、織田信成、安藤美姫、鈴木明子、高橋大輔、そして村主章枝と、日本が生んできた多くの名スケーターが、競技生活から去っていった。今回の町田の引退に比べれば、いずれの選手もある程度予測されていた引退ではあった。
それでも日本を代表して、世界のリンクに多くの軌跡を残したトップスケーターが相次いで引退したことで、1つの時代の終わりを実感すると共に、一抹の寂しさを感じないわけにはいかない。