沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
混戦の2歳GIは2週連続で蛯名正義。
“白いディープ”ダノンプラチナの輝き。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2014/12/22 11:25
2歳戦とは思えない大人びた競馬でGIを制したダノンプラチナ。「白いディープインパクト」は来年も飛ぶだろうか。
モニターを眺める中堅騎手が「変な競馬だなあ」。
前半600m通過は34秒9。馬場状態を考えると速い流れと言えるが、これはハナを切るアクティブミノルのラップだ。
中団より後ろにつけたアルマワイオリ、ネオルミエール、ダノンプラチナらは行きたがるような素振りを見せるも、それぞれの鞍上はガチッと手綱を抑えている。
「変な競馬だなあ」と、モニターを眺める中堅騎手がつぶやいた。確かに、前の数頭と後ろの数頭が別の流れのなかで競馬をしているかのようだ。それはおそらく、騎手たちが早めに馬場の悪い内から脱出する機をうかがい、牽制し合っていることが影響しているのだろう。
ADVERTISEMENT
3、4コーナー中間、モニターの中心にダノンプラチナが映し出された。
「お、エビちゃん(蛯名正義)が動いた」
蛯名はスムーズにダノンプラチナを馬群の外に持ち出し、先に動いたブライトエンブレムにつづいて押し上げて行く。
「またエビちゃんか」
中山の騎手たちには、この時点でもう勝敗が見えていたようだ。
抜け出したところで、蛯名は初めて鞭を使った。
直線、内でアクティブミノルがまだ先頭を守っている。
馬6、7頭ぶん外からダノンプラチナが先行馬に並びかけ、蛯名が鞭を右手に持ち替え、
ゴーサインを出した。
ダノンは内のブライトエンブレムをあっさり競り落とし、先に抜け出そうとしていたクラリティスカイの外に並びかけた。
ラスト200m、ダノンは並ぶ間もなくブライトをかわし、首、半馬身……とその差をひろげて行く。
先頭に立って1馬身ほど抜け出したところで、蛯名は初めて鞭を使った。内から14番人気のアルマワイオリが猛追してきたが、蛯名は2度ほど後ろを振り返る余裕を見せてゴールした。
勝ちタイムは1分35秒9。着差は3/4馬身しかなかったが、それ以上の力差を感じさせる内容だった。
「国枝先生んとこの馬だよね」
「うん、また盛り上がるだろうなあ」
などとモニターを見ていた騎手たちは言葉を交わし、最終レースに向かう者と、帰路につく者に分かれた。