フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
サプライズが起こったNHK杯男子。
村上大介の快挙と無良、羽生の収穫。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2014/12/01 12:00
「ノープレッシャーだった」と自身の優勝を語る23歳の村上。GPファイナルには、町田(24歳)、無良(23歳)、羽生(19歳)の3人が進出し、村上との勝負は全日本選手権となる。
見事に2年前のリベンジを果たした!
2年前のNHK杯で村上は右肩を脱臼し、演技中に棄権をした。すぐにカリフォルニアに戻って手術を受け、その後の一週間は強い鎮静剤の影響でほとんど記憶がないという。
「リハビリはすごくつらかった。もうスケートをやめてしまおうかと思ったこともありました。でもこんな形で終わりたくない、と思ってあきらめなかったんです」
今回、SPのウォームアップで各選手が紹介されているときにそのエピソードがアナウンスされた。
「あのときのつらい思いがふと頭をかすめた。これはリベンジだ、と思って滑りました。普段は滑り終わってもあまり感情を見せるほうではないけれど、2年前のことがあったのですごくこみあげてくるものがありました」
この大会では日本男子が優勝するだろうとは期待されていた。だがそれが村上大介になるとは、誰も予想していなかったことである。こんなことがあるからフィギュアスケートは本当に面白い、と思わせてくれるドラマチックな展開だった。
GPファイナル進出を決めた無良崇人と羽生結弦。
SP1位だった無良崇人は、フリーでは彼らしからぬジャンプミスが出て総合3位だった。試合後の会見で、無良はこうコメントした。
「最終滑走のプレッシャーというのは、想像を超えたものでした。これをいつもやってきた高橋(大輔)選手、羽生選手らはすごいなと思いました」
中国杯の衝突事故からわずか3週間でこの大会にやってきた羽生結弦は、総合4位だった。「出場したことは正しい判断だったと思うか」と聞かれると、すぐにこう答えた。
「正しかったと思います。まずは最後まで滑りきった。ミスはたくさんありましたが、ミスをしたということは後ろに下がることではないし、止まったり、練習不足で少し戻ったところもある。コンディションに合わせた精神状態が足らなかったと思い知らされました。むしろ前進につながるなと思ってます」
無良崇人、羽生結弦ともにGPファイナル行きの切符を手にした。
女子は惜しくも日本人3人が補欠となり、14年ぶりに日本女子のいないGPファイナルとなる。だが男子は町田樹、無良崇人、羽生結弦の3人が全日本選手権前に顔を合わせることになった。次のストップは、バルセロナである。