フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
サプライズが起こったNHK杯男子。
村上大介の快挙と無良、羽生の収穫。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAFLO
posted2014/12/01 12:00
「ノープレッシャーだった」と自身の優勝を語る23歳の村上。GPファイナルには、町田(24歳)、無良(23歳)、羽生(19歳)の3人が進出し、村上との勝負は全日本選手権となる。
村上「優勝できたのは、半分奇跡に近いと」
「ここで表彰台に乗れるとは、思っていなかった。目標は自己最高スコアを更新して来年はGP2大会に出られるようになることでした。優勝できたのは、半分奇跡に近いと思っています」
村上は、そう言ってはにかんだように微笑んだ。
23歳の彼は今回が5度目のGP大会挑戦(一回途中棄権)だが、これまでの最高記録は2010年スケートアメリカの5位だった。
「ここでの公式練習では、ずっと調子がよかった。(コーチの)フランクに、練習ではすごくうまくいっているから、自信を持って、と言われました。でも彼だって、まさか僕が優勝するとは思っていなかった。最後に彼を見たとき、まだ(驚きのあまり)半分口があいたままでした」
そう言って村上は、記者たちを笑わせた。
浅田匡子さんのアドバイスがあったからこそ。
村上は9歳で、米国永住権の抽選に当たったという両親とともに渡米した。スケートをはじめたのはその翌年、たまたま行ったショッピングモールにリンクがあったことがきっかけだったという。
体操やローラーブレードなど、運動が得意だったという彼はめきめき上達し、ノービスクラスの年齢で全米選手権に到達して初挑戦で2位となった。2006年にはジュニアで全米4位となり、米国代表として世界ジュニア選手権に出場し11位だった。
だがその翌年、スランプに陥って悩んでいるときに、声をかけてくれたのは当時カリフォルニアの同じリンクでトレーニングをしていた浅田真央、舞姉妹の母である浅田匡子さんだったという。
「あなたは日本人なのだから、日本代表として滑りなさい、と力強く押してくれた。自分もそれで、日の丸を背負って戦っていきたい、と強く思うようになりました」
2007-08年シーズンから、村上は日本スケート連盟に所属を移し、心機一転して新たなスタートをきることになった。