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錦織圭、フェレールを下し準決勝へ!
崩れたプランと、頭の中の引き出し。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAFLO
posted2014/11/14 11:20
第1セットを奪われたものの、第2セットからはさらに積極的に攻撃を仕掛け、フェレールを逆転した錦織圭。世界の4強、頂上はすでに視界に入っている。
錦織「気持ちを準備すればいいだけ」
O2アリーナに選手が入場した。フェレールに大声援。マリーの準決勝進出を願う地元ロンドンの観客は、当面のライバルである錦織をフェレールが倒してくれるものと内心、期待したのだろう。
さすがに、立ち上がりの錦織は硬さが目立った。ショットの思い切りは今ひとつ。ただ、ボール自体は悪くなかった。直前の対戦相手の変更にも、思いのほか、戸惑いはなかったのかもしれない。
「(変更を聞いて)ちょっと驚きはあったが、(フェレールは)何回もやっている相手。自分のしなければいけないことは把握している。気持ちを準備すればいいだけなので、試合に入ったら問題はなかった」
試合後の錦織の言葉である。頭の中の別の引き出しを開けるだけ、あたふたしても始まらない、とでもいうような、淡々とした口ぶりだった。
第1セットを落としても、その自信は揺るがなかったに違いない。第2セットに入ると、硬さもとれ、唯一足りなかった思い切りが出てくる。立ち上がりのフェレールのサービスゲームをブレーク。これで「リラックスして打っていけた」という錦織。自身のサービスゲームでは一度もブレークポイントを許さずキープを続け、セットを取り返した。
第3セットは圧巻だった。追いついて力が抜けた分、積極性が増し、ボールの伸びが段違いだった。粘りが身上のフェレールが淡泊に見えるほど、一方的に打ちまくった。
このセットの出来を錦織は「ほとんど完璧」と語った。5-1で迎えたフェレールのサービスゲームで、30-40と初めてのマッチポイント。錦織のショットの圧力に、フェレールのフォアハンドは力無くベースラインを越えた。
フェレール「彼が上だった」
「気持ちを準備するだけ」
こう思えた時点で、錦織の勝利は半ば確定していたとも言える。
「彼が上だった」
試合を振り返るフェレールの言葉に、何も付け足す必要はないだろう。
この日の最終試合で、フェデラーがマリーに勝利。この結果、グループBはフェデラーが1位、錦織が2位で準決勝進出を決めた。グループAの第3戦が14日に行なわれ、準決勝は15日。錦織には中1日の休養というアドバンテージができた。
「気持ちを切り替えて臨みたい」と錦織。今のところ、対戦相手はノバク・ジョコビッチ(セルビア)となる公算が最も大きい。ここまで室内コート29連勝中の第1シードだ。しかし、今の錦織なら、先の全米に続く番狂わせを起こしても不思議ではない。