ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本OPのギャラリーを3倍にした男。
アダム・スコット狂想曲の「裏側」。
posted2014/11/04 10:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Kyodo News
日本のファンが今や遅しと首を長くしていた頃、待ち人はまだロンドンにいた。
今年の日本オープン開幕前、一番の注目ポイントといえば、アダム・スコットに他ならなかった。
2013年春、オーガスタでの雨中の戦いを制したマスターズチャンピオンの、7年ぶりの来日。燃料補給等で北欧の都市を経由した彼のチャーター機は、日本の上空に居座った台風のあおりを受け、予定よりも2日遅れで到着した。
やっとの思いで成田空港に降り立ったスコットだったが、その足で向かった会場には開幕前日にも関わらず、多くのギャラリーの傘の花が咲き乱れていた。
ローリー・マキロイに次ぎ、現在の世界ランクは2位。しかし、彼の魅力はその実力にとどまらない。スラリとした8頭身の体躯から繰り出される、ダイナミックかつしなやかなスイング。そしてなにせ、ハンサムである。
昨年比で3倍! 2万9000人のギャラリー。
初日を迎え大挙した観衆の中には、オーストラリア国旗を手にしたギャラリーの姿もあった。ロープサイドには鈴なりの列ができ、ショットを放つと、拍手もそこそこに次の地点へと走る、走る。鋭いショットに感嘆する一方で、「カオ、ちっちゃ~い」という、甘ったるい声が何度も聞こえた。
グリーン上で長尺パターを左手に、歪めた顔の前に右手の指をかざすと、一斉にバシャ! バシャ! とスチールカメラのシャッター音が響いた。流行中のエイムポイント・エクスプレスという、パッティング前のラインの読み方のルーティンだ。4日間の平均パット数は全体50位(1.88)という散々な出来ではあったが、ジュニアゴルファーと思しき何人もの中高生が、この儀式をマネしてはしゃいでいた。
スーパースターが演出した期間中のギャラリー数2万9142人は、大会としては昨年比で約3倍、男子ツアーの今シーズンを通してみても2番目の数字だった。