「僕はいっぺんに、何人もの人を幸せにはできない」

　彼らが唸ったシンプルなゴルフと佇まい。それはきっと、若かりし頃から「天才」と期待されながら、30歳手前で大スランプに陥るなど紆余曲折を経て辿り着いたスタイル。自分の能力の幅をきっちりと把握し、その範囲で100％表現することに注力する。

　世界中の企業からあらゆるスポンサー契約のオファーがあっても、スコットはそれを必要最小限にとどめているという。

「僕はいっぺんに、何人もの人を幸せにはできないんだ。昔はそう思わなかったけれど、今はパートナーをできるだけ幸せにしたいと思う」

　来日した今回、黒いキャディバッグに契約を結ぶユニクロのロゴが入っていたのは、スコットによるサプライズだった。プロゴルファーにとっては、あらゆるウエアやキャップの空白は広告スペースだが、それを惜しみなく使い、パートナー企業を大いに喜ばせた。

　旅の荷物は、持てる分だけあればいい。身の丈以上の多くを求めすぎず、穏やかに、やれるべきことをシンプルにやる。そんな姿勢が結果的にたくさんの人を幸せにしていることを、スコットは知っているだろうか。

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