セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
ゲバラの言葉でサンプドリアが躍進!?
ミハイロビッチが発揮する「名言力」。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/10/01 10:40
サンプドリアを率いるミハイロビッチは、昨季チームのセリエAへの残留を決めて20万ユーロのボーナスを手にした。
傑作フレーズの効果か、見事残留を成し遂げた昨季。
選手たちの変化を感じ取ったミハイロビッチは、これに味をしめたのか、その後も機知とユーモアに富んだ傑作フレーズを連発した。
本拠地での残留争いの大一番を前に、ただ“ベローナを倒したい”では芸がない。指揮官は、ベローナがシェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台であることに引っかけ、「ジュリエットを(劇中で彼女が嘆く)バルコニーから引きずりおろす!」と宣言。選手たちは勢いに乗せられ、5-0の大勝を収めた。
フィオレンティーナとの対戦前には、フィレンツェゆかりの詩聖ダンテの大著『神曲』の3部構成を引き合いに出し、チームへ奮起を促した。
「私が就任したとき、チームは“地獄”にあった。今、われわれは(地獄の手前にある)“煉獄”まで這い上がって来た。私は選手たちを“天国”まで連れて行きたい」
“天国”とはもちろんセリエA残留の隠喩であり、ミハイロビッチは就任以降1試合あたり勝ち点1.38という好成績を残して、見事残留を成功させた。
新会長は、映画界の「成り上がり」。
ドスの利いたダミ声であっても、指揮官の口から飛び出す言葉は、聴く者の好奇心をくすぐり、刺激をもたらす。ヒット映画がシリーズ化するように、ミハイロビッチの会見は、一つのエンターテイメントになった。
エンターテイメントなら、フェレーロ新会長の出番だ。
6月12日、前オーナーのガッローネ一家の後を継いで、第17代会長となったフェレーロは、開口一番「これから始まるサンプドリアでの冒険を映画に喩えるなら、大作『ベン・ハー』に匹敵する」と豪語した。
イタリア有数の映画館チェーンを経営するフェレーロは、かつて社会派サッカー映画『ウルトラ』('91年)を製作した有名プロデューサーでもある。イタリア映画界における立志伝中の人物で、無学、無一文からのし上がった成り上がりを自認している。