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驚きのスペインA代表初招集!
バルサに現れた19歳、ムニルの未来。
posted2014/09/10 10:30
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Winner Media/AFLO
今季もバルセロナから有望なカンテラーノが台頭している。そんな原稿を書こうと思っていた矢先、驚きのニュースを目にした。
9月4日の親善試合で太腿を痛めたジエゴ・コスタの代役として、ムニル・エルハダジがスペイン代表に追加招集されたのである。
セスク・ファブレガスやボージャン・クルキッチなど、9月1日に19歳の誕生日を迎えたムニルより若くしてフル代表デビューを果たしたバルサの選手は過去にいた。ただ彼らはユース年代の代表の主力として何年もプレーしてきた経験があり、クラブでも既にトップチームである程度活躍していたケースがほとんどだ。
しかしムニルは、ちょうど半年前の3月5日にU-19代表に初招集されるまで、代表経験が皆無の無名選手。クラブでも昨季の所属はU-19に当たるフベニールAで、バルセロナBでは11試合に出場して4ゴール、トップチームでは今季の2試合に出場して1ゴールを決めた実績しかない。
そんな若者がフル代表に抜擢されるのは異例中の異例なのだ。
公園でプレーしていてスカウトされたのが2010年。
ムニルは1995年9月1日、マドリー州エル・エスコリアルにてモロッコ人の父、スペイン人の母の間に生まれた。
ストリートと地元クラブでプレーしていた彼に、飛躍のきっかけが訪れたのは2010年の夏。公園でプレーしている彼の姿を偶然見かけたスカウトの仲介でアトレティコ・マドリーと提携するラージョ・マハダオンダに加入すると、その年30試合で32ゴールを挙げ、一躍スペイン中の目をひく存在となる。
翌2011年の夏にはレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、ビジャレアルなどのオファーを受ける中、幼少から憧れ、かつ最も熱心なオファーを持ちかけてきたバルセロナと契約した。
ただはじめの2シーズンはU-18に当たるフベニールBでプレーしており、同じ1995年生まれで既にBチームに昇格、トップチームデビューを果たしていたジャン・マリー・ドンゴウらと比べれば注目される存在ではなかった。