オリンピックへの道BACK NUMBER
競泳界の超新星・小関也朱篤は、
北島康介を越えられるか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakao Fujita
posted2014/08/31 10:40
2月の短水路日本選手権200m平泳ぎでは北島康介が保持していた日本記録を更新した小関也朱篤。
8月21日から25日にかけてオーストラリア・ゴールドコーストで行なわれていたパンパシフィック選手権で、小関也朱篤(こせき やすひろ)が平泳ぎ100、200mの2冠を達成した。
188cmと日本の平泳ぎでは大柄な22歳は、今もっとも勢いのあるスイマーと言っていいかもしれない。そして同時に、異色の経歴の持ち主でもある。
日本代表として活躍する選手はたいがい、10代には頭角を現すのが競泳だが、小関は高校生の頃まで無名に等しい存在だった。転機は大学時代に訪れた。小関は入学してからしばらくの間、指導を受ける藤森善弘コーチのアドバイスで自由形に取り組んだ。将来を見据え、まずは体作りから始めるべきだというコーチの考えからだった。自由形で土台となる体力を培い、大学3年生になって平泳ぎに戻ると、国内の大会で上位に入る力がついていた。
この1年は、フォームにも磨きをかけてきた。成果が表れたのが今シーズンだ。社会人となった今春の日本選手権で100mを制すると、6月のジャパンオープンでは100mに加え200mでも優勝。そのタイム2分8秒34はロンドン五輪にあてはめると4位、昨年の世界選手権なら2位に相当する好記録だった。主要国際大会では初めての日本代表として出場したパンパシフィック選手権でも、その勢いはとどまることを知らなかった。
自認する「ポスト北島」という立場を背負って。
日本の平泳ぎ界を長年にわたり牽引してきたのは北島康介だ。だが、後に続くべき若手が伸び悩み、この種目の先行きを不安視する声もあった。その中にあっての活躍だけに、注目も集まる。
本人もそれを自覚する。
「(ポスト北島の)立場になってくると思います。気負わずに行きたいです」
長水路の200mに出場した回数は、今までに10回あるかないかだという。経験が浅いことも伸びしろを感じさせる。
また「マイペースだし、自分の武器はあまり緊張しないところだと思います」と言うように、レースでの思い切りのよさも小関の魅力である。パンパシフィック選手権200mでスタートから飛ばし、世界記録を上回るハイペースで前半を折り返した泳ぎが象徴的だ。
華々しく名乗りを上げ、大きな期待を集める新鋭は、9月下旬からのアジア大会でも2種目金メダルを誓う。