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昨秋覇者・沖縄尚学が失った「底力」。
“ライアン”山城、夏の暑さに散る。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/08/22 17:00
沖縄尚学のエース山城大智は試合後「相手の方が上だった」とさっぱりした表情で話した。
エース山城の“ライアン投法”に微妙な狂いが。
しかし、なぜ沖縄尚学はここまで一方的に敗れたのか。
ひとつには、エース・山城の不調があった。山城は、初戦の作新学院戦では被安打3、奪三振14と好投したが、二松学舎大付戦やこの日は本調子とは言い難かった。3回戦は被安打13失点5。この日は5回で被安打11失点8で降板している。
比嘉監督は山城の不調の要因をこう説明する。
「あのフォームが持つ怖さですね。一度バランスを崩すと、上手くいかなくなります。それでも強気で攻めてくれたと思いますが、変化球でストライクが取れなかったので、ストレートを狙い撃ちされていました」
山城のフォームは、足を高く上げてダイナミックに投げ込むのが特徴。“ライアン投法”と話題になったが、夏の大会を戦う中で疲れがたまってくると、そのダイナミックなフォームに狂いが生じた。
山城を使わざるをえなかった、苦しい台所事情。
やはり山城のようなタイプの投手には、万全でマウンドに登る状況を作る必要があったのではないだろうか。
そのためには、先発の回避、あるいは早い回での継投策も考えられた。昨秋の明治神宮大会決勝では、序盤に打ち込まれた山城を一度外野に回し、久保柊人を登板させている。久保は、上背こそないが140kmのストレートを投げる本格派で、その時は流れを呼び込むピッチングを見せている。
しかし、他の策を立てることができない事情があったと比嘉監督は顔をしかめる。
「継投に関しては、準備をさせるのが遅かったというのが一つと、久保のひじに不安がありました。上原(康汰)の状態も良くなかったので、総合的に判断して山城を先発にしました」
昨秋とは、投手陣の状況が違ったというわけだ。