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“最速”のローマがスクデットへ。
混乱の王者をとらえる準備は整った。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/08/20 10:30
2011年のオーナー交代以降、的確な補強を重ねて昨季はついに2位まで辿りついたローマ。4度目のスクデットは完全に視野に入っている。
親善試合ではR・マドリー相手に金星をあげる。
戦術のベースは、今季もリーグ屈指の中盤と堅守の守備陣が支える「4-3-3」だ。ガルシアは新オプションとして、トップ下にFWリャイッチを置く「4-2-3-1」も試しており、この布陣ではMFピアニッチとMFナインゴランが中盤の底でコンビを組む。
前線のフィニッシュ精度に改善の余地を残すものの、右のSBマイコン&FWイトゥルベ、左のSBコール&FWジェルビーニョが繰り出すWサイドアタックは、セリエA中の守備陣をパニックに陥れるだろう。
突然の監督交代に揺れるユーベや再建中のミラノ勢に対して、ローマが持つ強みはチーム強化の方向性が一貫している点だ。
“ボールを奪って、すぐに速攻”というガルシア流のキーコンセプトは今季も継続され、プレミアの強豪と手合わせした米国遠征やその後のプレシーズンマッチで、より徹底されている。
特にトッティのゴールによって欧州王者R・マドリー相手にあげた金星は、親善試合とはいえ、大きな高揚感をチームに与えた。
主力には多額のオファーが舞い込んでいるが……。
勢いづくローマだが、一抹の不安は主力の去就問題だ。
左膝リハビリ中の守備的MFストロートマンについては、執心するファンハール監督(マンチェスターU)に対し、ガルシアが「1億ユーロ払ってもらおうか」と笑って一蹴したものの、守備の要であるCBベナティアを求める欧州強豪クラブの獲得攻勢はつづく。すでに開幕した英独からは、豊富な資金を誇るマンUとチェルシー、そしてバイエルンがそれぞれ獲得へ迫ると報じられている。
欧州中の人気銘柄となったベナティア本人には、米国遠征中もパロッタ会長以下、主将トッティら重鎮選手が「ローマに残れ。いっしょにタイトルを勝ち取ろう」と説得を試みた。ただし、クラブは流出に備えてイタリア代表CBアストーリをすでに獲得してもいる。
今夏はMFピアニッチにも、パリSGやA・マドリーから決して少なくない額のオファーが届いた。ボスニアの天才は、彼らに「NO」を突きつけた。
「ローマでスクデットを獲りたいから残った。同じサッカー・ビジョンを持つガルシア監督の存在が自分にとっては大きい。優勝するには、昨季の勢いを生かしながらプレーレベルを上げていくことが大事だと思う」