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“最速”のローマがスクデットへ。
混乱の王者をとらえる準備は整った。
posted2014/08/20 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
映画『ローマの休日』が封切られたのは、今から60年以上前のことだ。アン王女と新聞記者ジョーは古いベスパにまたがり、トコトコと牧歌的に永遠の都を巡った。
もし彼らが2014年のASローマを見たなら、疾走感溢れるプレーに目を丸くしたにちがいない。
指揮官ガルシア率いるローマの加速力は「まさに“モトGP”」。地元紙が世界最高峰の2輪レースに喩えたタイトルを付けるほど、彼らのプレースピードは国内で傑出している。就任初年度だった昨季、チームを2位に大躍進させた指揮官のルディ・ガルシアは大望を隠さない。
「CLも大きな目標だが、今シーズンのファーストチョイスはカンピオナート制覇だ」
昨季、ローマは堂々の勝ち点85を挙げた。
史上最多勝ち点記録「102」を叩き出した3連覇王者ユベントスにこそ屈したが、ローマが積み上げた数字は、4年前に優勝したミラン(82点)を上回っている。
年間を通した細かなデータを見れば、ボールポゼッションはもちろん、敵陣でのパス成功数やドリブル成功率、ボディコンタクトを伴うボールの競り合いでの勝率など、試合の鍵となる局面でも、ユーベと互角どころか王者を凌ぐ点も少なくなかったことがわかる。
足りなかった「経験」を埋めるピースを補強で獲得。
ユーベにあってローマになかったものは、タイトルレースを制した経験と気迫だった。
逆転優勝の望みがほぼ絶たれていた昨季のラスト3戦で、ローマは意地を見せることなく3連敗した。闘将コンテが作り上げた常勝ユーベと比べ、彼らは若かった。
王者につけられた勝ち点17のギャップを埋めるため、今夏サバティーニSDは総額2200万ユーロ近くを費やして、期待の新星FWイトゥルベを獲得した。
その一方で、ベテランDFアシュリー・コールやMFケイタも獲っている。彼らの豊かな経験は、カンピオナートの分水嶺やCLへ挑むローマにとって、貴重な拠り所となるはずだ。
クラブの強気の補強姿勢は、チーム全体に“今季は本気でタイトルを獲りにいくぞ”というメッセージとなって伝わった。