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ロッテ岡田、1771打席連続ノーアーチ。
一発への微かな憧れと、貫く“仕事”。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/08/05 10:30

ロッテ岡田、1771打席連続ノーアーチ。一発への微かな憧れと、貫く“仕事”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

大学中退から社会人を経て、2008年に育成枠でドラフト指名を受けた岡田幸文。プロ初めてのホームランを放った時、彼はどんな表情をするのだろうか。

アマチュア時代から、本塁打とは無縁だった。

 作新学院時代に放ったアーチはたったの1本。それも、高校のグラウンドで行われた練習試合であるため公式戦での本塁打は0本だ。進学した日大は怪我で中退。当然のように一発は出なかった。

 その後所属した全足利クラブでも、3番を任されるなど中軸として機能していたものの本塁打とは無縁だった。社会人時代に記録したアーチはわずか1本。それも岡田本人に言わせれば、「カスカスっとした打球でたまたま入ってくれた」のだという。

 そんな、長打力のない岡田が、'08年のドラフトで育成6位ながらプロ入りすることができた。最大の理由は、50メートル5秒6の俊足、その脚力を最大限に生かした守備が評価されたからだ。

 2年目の'10年、二軍でも本塁打ゼロだった男は、6月にロッテで初となる育成枠から一軍登録を勝ち取ると、中日との日本シリーズ第7戦で決勝打を放ち日本一に貢献するなど、一軍に欠かせない選手となった。

「一番うまい外野手は岡田」と言わしめる堅守。

 岡田のプレースタイルを決定づけたのが翌'11年だった。育成出身選手としては初の全試合出場を果たし、シーズン359連続守備機会無失策のパ・リーグ新記録を樹立。そのフィールディングは、当時「球界屈指の外野手」と呼ばれていた糸井嘉男をして、「プロで一番うまい外野手は岡田でしょう。前の打球処理とかハンパないですから。ヒットにならないですもん」と唸らせたほどである。

 '11年から2年連続でゴールデングラブ賞を獲得。盗塁も同年の41をはじめ毎年2ケタの数字を叩き出し、一軍デビュー以降、一度も二軍落ちを経験していない。足と守備のスペシャリストとして地位を確立した岡田ではあるが、豪快な一発に全く惹かれていないかと言えば、そうではないようだ。

 まあ、と一拍間をおいてから、岡田は本音を漏らす。

「ホームランはいつか打ちたいですよ。でも、いくら『ヒットの延長がホームラン』と言っても、そう簡単に打てるわけじゃないですからね。ホームランバッターではない僕なんかが大きいのを狙おうとすると、フォームが崩れるんですよ。だから、やっぱり1打席、1打席、低くて強い打球を打つことだけを意識して打席に立つことが大事かな、と」

【次ページ】 「ホームランを打てなくてもプロ野球選手としてできる」

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