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ドイツに声援を送ったブラジル人たち。
歴史的大敗で傷ついた王国の“誇り”。 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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posted2014/07/09 11:35

ドイツに声援を送ったブラジル人たち。歴史的大敗で傷ついた王国の“誇り”。<Number Web> photograph by Getty Images

大会前は不安視されながらも、ここまで安定したセーブでチームを救ってきたジュリオ・セザルだったが、押し寄せるドイツの猛攻になす術はなかった。ネイマールとチアゴ・シウバがいたら、試合の結果は変わっていたのだろうか。

万全のドイツが、あっという間に勝負を決めた。

 一方ドイツは、ムスタフィが離脱したものの、主力は万全。フンメルスもインフルエンザから復帰し、得点を挙げた。ラームをボランチではなく右SBで起用せざるを得ないのは計算外だが、それも大きな打撃ではない。ここまでの戦いを振り返っても、ポゼッションを高めて圧倒する戦いもあれば、ノイアーに助けられつつ省エネサッカーで勝ちきった試合もあり、と多彩な引き出しを見せながら結果を手にしてきている。準決勝でブラジルと戦う準備は万全だったと言えるだろう。

 試合は、あっという間に決着がついた。11分にCKからミュラーが決めると、23分、24分、26分、29分とまさに立て続けにゴールが決まった。これで0-5、スタンドが嘆く暇もなくブラジルの決勝進出の可能性は消えてしまった。

 ピッチ上ではダビド・ルイスら守備陣までが攻撃を始め、中盤でのパスもあっさりとカットされた。手薄な守備陣をあざ笑うかのようにドイツの選手たちがスペースへなだれ込んだ。

ハーフタイムでの交代の効果も長くは続かず……。

 ハーフタイムには、ブラジルは前半にミスの多かったフェルナンジーニョとフッキを下げ、パウリーニョとラミレスを投入してバランスを整えようとした。ドイツはフンメルスに代えてメルテザッカーを投入、明らかに決勝を見据えての交代だった。

 後半開始からしばらくは、ブラジルがバランスを取り戻して良く戦っているように見えた。それでも、69分に右サイドのラームのクロスをシュールレがダイレクトであわせて6点目。このあたりから、黄色く染まったスタンドがドイツのプレーに声援を送り始めた。更にドイツチーム最年少のドラクスラーも76分にW杯デビューを飾った。

 7回に及んだ得点の形はクロスあり、中央からの崩しあり。ノイアーのパントから一発でチャンスになりかけたシーンもあった。

 試合終了直前にオスカルが一矢報いたが、状況が変わるわけでもない。試合終了の笛が鳴り、ブラジルの選手、スタッフ達がピッチで円陣を組む試合終了の儀式が行なわれる。スタンドからは、ようやく盛大なブーイングが鳴り響いた。ブラジルが敗者になった瞬間だった。

【次ページ】 優勝を「望まれる」のではなく「期待される」ということ。

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