ブラジルW杯通信BACK NUMBER
これは「方向性なき敗戦」ではない。
GL敗退の日本、選手が信じた“道”。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/06/25 11:15
試合後、虚空を見つめ悔しさをかみ締める本田圭佑。試合後のインタビューでも「負け犬」「口だけ」と強い言葉で自らを責めた。
岡崎の同点弾……も期待は長く続かなかった。
だが、ここでひるむことはなかった。前半終了間際のラストプレー。カウンターからのピンチを防いだ日本は、内田から右サイドに開いた本田にパス。本田の左足クロスに岡崎がヘッドで合わせた。
DFを引きずりながらのバックヘッドは、必死の横っ飛びを見せたGKの左手すれすれのところをすり抜けながらゴール右隅に吸い込まれた。ここまでの2試合でいずれもシュートゼロに終わっていた岡崎の今大会初シュートで、日本は1-1に追いついた。
そのころ、裏カードではギリシャが前半42分にサマリスのゴールで1-0としていた。もしそのままで終われば、日本はコロンビアに勝利しさえすれば、スコアに関係なく決勝トーナメントに進むことができる――。
だが、期待に胸を膨らませる時間は長くは続かなかった。コロンビアは後半から今大会2得点中の背番号10、ロドリゲスを投入。悪夢が訪れたのはその10分後だった。ゴール正面付近でロドリゲスにパスが渡った瞬間、日本のDF陣3人がロドリゲスに引きつけられた。
そこからパスがつながり、逆サイドのジャクソン・マルティネスがフリーで楽々とシュート。またしても重い失点だ。コートジボワール戦で後半途中から入ったドログバに意識が向かいすぎ、他の選手のマークが甘くなってしまったのと同じ光景だったのも痛恨だった。
本田圭佑は、宙に向かって叫び声を上げた。
その後は、既視感で塗りつぶされたように時間が過ぎていった。足が止まった後半37分、マルティネスに決められて1-3。さらには後半45分にロドリゲスにとどめのゴールを許し、万事休した。
試合終了と同時に、呆然とした表情を浮かべた本田は、チームメートが観客席に向かい始めたとき、すぐにはついていかずその場にとどまり、宙に向かって叫び声を上げた。その咆哮はどこへつながっていくのか。
「負けたから、何を言ってもただの負け犬の遠吠えになる。勝ってないので、何言ってんねんという話になる」と弱気を見せながらも、最後の意地を振り絞るかのように、「僕はこのスタンスでいくことが、個々の選手の成長にもつながると思っている」と言った。