ブラジルW杯通信BACK NUMBER
サポートメンバーだった前回から4年。
香川真司を奮起させる重い「失望」。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byTakuya Sugiyama
posted2014/06/16 11:40
自身のサイドから2失点を喫し、86分には柿谷曜一朗と交代した香川真司。日本の10番が真の輝きを取り戻した時、グループリーグ突破への光明は見えるはずだ。
4年前、香川はサポートメンバーだった。
4年前のW杯。香川はミックスゾーンに入ることすら許されなかった。サポートメンバーとしてチームに帯同はしていたものの、登録選手とは違う動線を歩いた。熱っぽく試合を振り返る選手たちの横の狭い通路で身体を小さくしながら、チームの荷物を運んでいたこともあった。
W杯デビューを飾った香川はミックスゾーンに姿を見せると、まったく躊躇を見せることなく、記者の前で足を止めた。無言で足早に歩き去った本田以外の選手はすべて取材に応じていた。前日に膨らませた期待に応えることができなかった。チームとしても、個人としても……。しかし、香川も逃げることなく、自身の不甲斐なさを認めた。
「この試合のために調整してきましたし、それでこの出来ならば、それが自分の実力なのかなと。なんか、すごく、ホンマにこれが初戦というのは、終わってから気づくのはすごく悔しい。今日は先制点をとりながらも、僕たちのペースで1回も試合を進めていなかった。自分たちの、特に攻撃においては、形というのが、今までこの4年間やってきたことをトライできなかった、しなかった。そのことに対して、すごく、何をしに来たんだと、悔しい。
できなかったし、しようとしなかったという風にも感じる。もっとできたと思うから。次は自分たちの強みを出して行くしかない。まあ、ここで気づくようじゃ、遅いですけど。悔しいし、なんか、言葉にならないけど。こんな形で終わりたくない、それだけしかないです。あと2試合あるので、チャンスはあると思っているし、諦めたくない。イヤでも前を向いて、切り替えてやっていきたいです。スタジアムのサポーターがね、本当に声援をくれて。だから僕たちは次へ向けて、しっかり調整しなくちゃいけない」
「やられた」ではなく「もっとやれたはず」
こちらの顏をしっかりと捉えながら話す香川の言葉からは力が伝わってくる。
それは次の試合へ向けた闘志であり、同時に自身への怒りにも感じられた。「やられてしまった」というよりも、「もっとやれたはずなのに」という怒りだ。試合終了からわずかしか時間が経っていないなかでは、プレーの詳細を整理することは難しい。だからこそ、漠然としてはいるけれど、大きくて、重い失望を抱いているに違いない。4年間待ち続けた舞台で何ひとつできなかった。その厳しい現実が香川を奮起させるはずだ。