濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
立ち技界最大勢力、チームドラゴン。
王者を続々輩出する強さの秘密とは。
posted2014/06/11 16:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
現在の日本立ち技格闘技界で最大の勢力を誇るジム・チームがどこかと聞かれたら、多くのファンはチームドラゴンと答えるのではないだろうか。
'90年代のキック界で大活躍した前田憲作が設立したチームドラゴン。そのジムは東京・町田にある。リングが設置できるほどのスペースはなく、サンドバッグも2つだけ。それでもプロ選手の数は40人に迫り、現在5人ものチャンピオンを抱えているのだ。
OBが獲得したベルトやトーナメント、リーグ戦での優勝数を合わせれば、2002年の設立からわずか12年で20を超える栄冠を勝ち取ってきたことになる。
山崎秀晃は、チームドラゴンの主戦場であるKrushの-63kg級王者。武尊は昨年、新設されたKrush-58kg級の初代王座を保持している。卜部功也はISKA世界ライト級チャンピオン。兄の卜部弘嵩はKrush-60kg級のタイトルを失ったものの、今年ISKA世界スーパーライト級タイトルを獲得した。
「教えすぎはよくない」という指導方針。
弘嵩が世界タイトルを獲得したのは、5月1日にフランスで行なわれた大会でのことだった。この大会では、功也もタイトル防衛に成功している。5月17日には、伊澤波人が中国のイベント『英雄伝説』の57kg級王座決定トーナメントに出場、1回戦で中国人選手、決勝戦でタイ人選手を下して戴冠を果たした。
海外遠征では、アバウトな大会運営や露骨なホームタウン・デシジョンがあって当たり前。そんな敵地での3連勝は、正真正銘の快挙にほかならない。
前田の指導方針は「教えすぎはよくない」というもの。
「選手とは距離を取ってますね。いい意味でほったらかしです(笑)。基本は教えるし、必要な時は助けますが、型にはめることはしません。選手にはそれぞれ個性があるんだから、僕のコピーを作るのは間違ってるんですよ」
しかし試合が決まれば、弟子たちの対戦相手を徹底的に研究する。試合前のミット打ちでは、相手の構えや距離、得意技などを真似て実戦的シミュレーションを選手に課すのが恒例だ。前田の“完コピ”ぶりは驚くほどで、卜部功也は「試合になると、練習で予測していた通りの動きを相手がしてくるんですよ。どの試合でもそうなるんです」と言う。