ブラジルW杯通信BACK NUMBER
世界のCBの頂点に立つ“モンスター”。
チアゴ・シウバ、故郷でのW杯決勝へ。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2014/05/27 10:40
2013年、母国でのコンフェデ杯決勝ではスペインを完封し、ブラジルにタイトルをもたらしたチアゴ・シウバ。代表、クラブ双方で主将を務める生粋のキャプテンでもある。
チアゴ・シウバがいるからこそ、ラインを上げられる。
チアゴが加入して以降、(イブラヒモビッチの加入もあり)パリはフランスリーグを2連覇している。一方、バルサはグアルディオラが去ったことも影響して、ついに今季無冠に終わった。もしチアゴがバルサを選択していたら……。母国で「モンスター」と呼ばれるセンターバックの決断が、ヨーロッパの勢力図を塗り替えたのだ。
チアゴ・シウバのセンターバックとしての特徴は、「美しくボールを奪う」ことだ。背筋を伸ばしたままスッと相手に近づくと、散歩のための一歩を踏み出すような自然さで懐に飛び込み、ボールを搦めとってしまう。速さに頼った力尽くの奪取ではなく、しっかりとした観察としなやかな身のこなしに基づくクレバーな奪取だ。
身長183cmとセンターバックとしてはそれほど大きくないが、跳躍力に優れ、本人も「空中戦は得意」と言うようにヘディングが強い。コンフェデレーションズカップで日本がブラジルと対戦したとき、長谷部誠は「ああいうセンターバックがいるから、彼らはDFラインを押し上げられる」と感嘆していた。
マルディーニ「君ならミランのレジェンドになれる」。
さらにチアゴ・シウバがサッカー界で評価されるのは、リーダーシップがあるからだ。
セレソンでセンターバックを組むダビド・ルイスが陽気で口達者なのに対して、チアゴ・シウバは言葉数が少なく、真面目な性格だ。だが、立ち居振る舞いにチームへの想いが溢れており、それがチームメイトを引きつける。
「もし他者をリスペクトすれば、自分もリスペクトされる。それが僕のキャプテンシーのルーツだ」
ACミラン時代、チアゴ・シウバはマルディーニをお手本にしていた。ともに過ごしたのはわずか半年だが、「君ならACミランのレジェンドになれる」と励まされ、プレーだけでなく、人間的にも多くのことを学んだ。「フォーメーションを議論するのが好き」という戦術的思考がイタリアサッカーとマッチし、瞬く間に世界を代表するセンターバックに成長した。