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イングランドがW杯8強で満足の理由。
期待薄の代表と、絶好調のルーニー。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/05/29 10:30
デンマークとの親善試合では60分で退いたが、プレー面においてもメンタル面においてもルーニーがチームの支柱であることは間違いない。イングランドの至宝はその価値をブラジルでも証明できるか。
ベスト8で成功と言われるイングランドの命運は。
フィジカル面に関しては、1月に痛めたグローイン(股関節)の張りで今季末のリーグ戦3試合を欠場したが、これは暫定指揮を執ったライアン・ギグスの配慮もあってのこと。実際にはW杯を意識した調整の始まりであり、ルーニーは、最終節翌日に代表合宿が行なわれるポルトガルへと1週間早く飛び立った。
ホリデーを兼ねた先乗りだが、自腹を切ってマンUのトレーナー2名を同行させた本人は、「100%の状態で開幕を迎える」と頼もしい。
28歳の胸中には、選手としてのピーク年齢で迎えるW杯という意識もあるのだろう。たしかにオールラウンドなルーニーの能力を考えれば、4年後のW杯も現実的ではある。主戦場を中盤に変え、ピッチの中央でキープ力と長短織り交ぜたパス能力を発揮する「ベテランMF」としての姿は容易に想像できる。
だが、恐らくルーニー自身がそうであるように、国民も前線でのラストチャンスとして今大会を捉えている。チームへの期待は例年になく低い。世代交代の過渡期にある今大会は、ベスト8でも成功と言われるだろう。その成功への鍵を握るのは、言うまでもなくルーニーの出来。ブラジルのピッチで「ベスト・ルーニー」が目撃されれば、イングランドにとっては納得のW杯だ。