ブラジルW杯通信BACK NUMBER
イングランドがW杯8強で満足の理由。
期待薄の代表と、絶好調のルーニー。
posted2014/05/29 10:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
代表での2014年W杯予選では、7ゴールのチーム得点王。マンチェスター・ユナイテッドでの計19ゴール17アシストは、2013-'14シーズンのチーム最多。ウェイン・ルーニーが、イングランドのエースと言われるのは当然だ。
ロイ・ホジソン代表監督からして、「ワールドクラスのスーパースター」という認識を公言している。
ところが母国民は、ブラジル大会を目前にルーニーを信じ切れずにいる。無理もない。過去10年間で2度のW杯では、エースどころか、ルーニーらしい姿すら見られなかったのだ。
ルーニーはEURO2004で颯爽と国際舞台に登場した。まだ18歳だったストライカーの負傷退場がチームのベスト8敗退を告げたように、代表の将来を担う逸材であることは明白だった。しかし、イングランドの超新星が国際大会で輝いたのは、この欧州選手権が最初で最後となっている。
代表での得点は38。しかしW杯でのゴールはいまだ0。
過去のW杯では、コンディション不良というハンディを抱えていたことも事実だ。'06年ドイツ大会は開幕1カ月半前に中足骨を骨折。続く'10年南ア大会も、同年3月に負った足首の怪我を引きずりながらの開幕だった。
但し、本大会不振の要因は精神面の不安定さ。ドイツでは、PK戦で敗れたポルトガルとの準々決勝で一発退場を命じられ、60分過ぎにはピッチから姿を消していた。
南アでは、ドイツに惨敗した決勝トーナメント1回戦でもフル出場したが、実際にはピッチ上にいないようなものだった。ルーニーは、大会後に離婚の危機が叫ばれることになった私生活の問題で心ここにあらず。ボールコントロールさえままならない有り様で、母国メディアに「セメント袋でさえ足下で弾む」とまで言われた。
W杯前の2009-'10シーズンには、クリスティアーノ・ロナウドが去ったマンUで計34得点と爆発していただけに、本大会での体たらくはファンを失望させた。代表でのルーニーは今大会予選を終えた時点で通算38得点。歴代得点王ボビー・チャールトンの49得点も射程圏内だが、その中にW杯でのゴールは1点もない。