ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼と松山英樹はライバル“未満”?
渡辺謙が語った2人の「関係と立場」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2014/03/06 10:30
練習ラウンドでの松山と石川は、どんな会話をしているのだろうか。2人の関係が「仲間」から変化する過程を見るのも楽しみだ。
「宿命のライバル」とはまた違う関係性。
ともにアマチュア時代にプロツアー制覇。賞金王戴冠、そして米ツアー進出。ここ数年で、彼らは日本ゴルフの話題の中心となり、瞬く間に「同学年の宿命のライバル」として、比較されるようになった。
2人は'13-'14年シーズンの3分の1を終えた段階で、早くも来季のシード権獲得をほぼ確実にしている。
スター選手が海外に出稼ぎに出たり、オフを満喫したりする秋から年明け、つまりシーズン序盤戦からともにエンジン全開。働きアリのように、厳しい戦いが待つ季節に備え、早いうちにフェデックスカップポイントを荒稼ぎする謙虚な作戦が実を結んだ。次のシーズンの2人の主戦場を心配する必要が無くなったいま、周囲の期待はじわじわと、米ツアー優勝をどちらが先に手にするかという点にシフトしつつある。
けれど2人の間に、この史上4人目の日本人チャンピオンの座を「我先に」と奪い合う対抗心がメラメラ燃え盛っているかというと、そうでもないらしい。もちろんその1勝が途方もなく難しいことも理解している。けれどそれ以上に「宿命のライバル」という世間の見方と、彼らの内心とには、少なくないギャップがあるようだ。
ゴルフという競技の特殊な“勝ち負け”。
石川本人も「英樹のことを意識しないわけがない」と素直だ。けれど「ライバルか?」という疑問には「うーん」と、どうも視線が宙をさまよう。それはまず、ゴルフの“勝ち負け”が特異であるがゆえだ。
「実際2人で、お互いに優勝争いをしてみないと、ライバルだとはなかなか思えない。プロゴルファーはみんなそうだと思うんですよね。(試合の)スタート時点では誰がライバルになるか分からないし、最終日の前半くらいまでは自分のことに必死で、『誰々には勝ちたい』とかいう気持ちは湧いてこないんですよ。優勝争いが始まった時に、やっと“相手”が出てくるのがゴルフだと思う」
トーナメントでは1試合で出場選手の99%が負ける。156人が出場する試合では、勝者は1人、残りの155人は敗者。だから特定の選手が、必ずしもトロフィーを奪い合う敵になるとは限らない。一対一で、拳を突き合わせる格闘技などとは違う。