ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼と松山英樹はライバル“未満”?
渡辺謙が語った2人の「関係と立場」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2014/03/06 10:30
練習ラウンドでの松山と石川は、どんな会話をしているのだろうか。2人の関係が「仲間」から変化する過程を見るのも楽しみだ。
ライバルといえるのは、ミケルソンとタイガーぐらい。
「英樹が一緒に優勝争いの輪の中にいたら、他の選手よりも(松山に)何倍も強いライバル心が芽生えるはず」と、石川はその日を待ってはいるのだが、2人は依然として、米ツアーでは予選ラウンドですら同組でプレーしたことが無く、同じ試合で優勝争いを演じたことも無い。だから今のところ、松山のことは「普段はサバイバルの中を一緒に戦っている“仲間”かなあ……。そこは不思議なんですけど」というのが本音である。
「そういう(ライバル)関係になっているのは、例えば今のミケルソンとタイガーくらいでしょう。世界でもずば抜けていないと、そうは言えないのかもしれない。今は『まだまだ、お互いこういう厳しい舞台で一緒に頑張っていかなきゃ』という感じ」
そしてプロとして過ごした年月では下回る松山も、かねてから「メジャーを遼よりも先に勝ったら、追いついたことになるかもしれない」と、最高の目標であるメジャー制覇の先、現在地からはまだ遠いと思われるところに、互いの勝負の行方のひとつがあるとしている。
ライバル関係は、本人たちの思いとはかけ離れたところで、周囲の興味本位が先行して生み出される。相手を過剰に気にして自分を見失っていては本末転倒だ。
とはいえ、そんな世間の目と、どう付き合っていくかもスターに求められる資質である。
渡辺謙が語った、勝利に近いのはどっち?
かねてから石川と面識があり、2月のノーザントラストオープンで松山とプロアマ戦をともにした俳優の渡辺謙は「彼らは野球のピッチャーとバッターみたいに、直接対決するわけじゃない。お互い刺激を受けたり、感じ合いながらも、実際に戦う相手はコースだったりする。あまり意識はないんじゃないかな」と若き2人の心情に理解を示していた。
しかし彼らを比べ、それぞれの今後を予想するのは、ひとりのゴルフファンとしての大きな関心事。ちなみに「石川君の方が攻めるタイプ。でも松山君はなかなかボギーを叩かない。勝つことに関してはいまのところ松山君の方が近いかもしれない」というのが渡辺の現段階での見方だ。
今後は立場が逆転するかもしれない。だが、時にどちらかが批判を浴びようとも「それをパワーに変えられないと、どんな世界でもプロとしてはうまく行かないんじゃないかな」と、語気を強めた。
米ツアーという世界最高の舞台においては、2人の関係はまだ“ライバル未満”に過ぎない。
口も利かないどころか、目も合わせない。一緒に練習ラウンドをするなんてもってのほか。真のライバル意識が芽生え始めたら、そんな日がいつか来るかもしれない。
けれど、2人がそんな刺激的な関係性を作り上げる過程は楽しみのひとつ。仲間からライバルへとステップを踏むその時も、いまは待ち遠しい。