MLB東奔西走BACK NUMBER
MLBと日本で異なるキャンプ事情。
「招待選手」という一挙三得制度。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/02/04 10:40
昨年の8月にメッツに移籍した松坂大輔投手。3勝3敗、防御率4.42と勝ち星こそ先行しなかったが、復活の足かがりとなる好投を見せた。今季、メッツとマイナー契約を結び、再び開幕メジャーを目指す。
メジャーのキャンプが抱える、特有の事情とは。
その理由の1つは人員不足の解消だ。
メジャーのキャンプの場合、キャンプインからオープン戦開始まで2週間ほどしかない。
そのため主力選手たちは徐々に出場イニングを延ばしながら、実戦感覚を養っていく。だから、オープン戦開始当初は40人枠の選手だけでは足りず、どうしても補充選手が必要になってくる。その役目を果たしているのが招待選手たちだ。
主力選手たちが仕上がり始め、出場イニングを増やしていけば、必然的に招待選手たちは余剰人員となってしまう。
その頃になるとマイナー・キャンプも始まっており、必要がなくなった選手たちは次々にマイナーへ送られることになる。
特にメジャー実績のない若手の招待選手たちは、時にはオープン戦にほとんど出場できないまま、既定路線のようにマイナーに降格させられることもある。
補強の最終候補でもあり、リスク管理要員でもある。
しかし、招待選手は単なる補充要員というわけではない。松坂をはじめとする前述の日本人選手たちのように、開幕メジャー入りを争う貴重な戦力でもあるのだ。
各チームともにオフの間に戦力補強を行ないながら40人枠を決めていく。しかし、契約上の問題や予算の関係上、完璧な40人を揃えるのは不可能なことであり、どのチームも戦力的に不安要素があるもの。その戦略的な補填として機能しているのが招待選手となる。
メジャー契約を結び、1年間の年俸を保証するのではなく、過去に実績を残した選手たちを招待選手として集め、オープン戦での活躍を確認しながらチームの戦力補填が可能かどうかを見極める。この方式をとれば、チームにとって予算的に大きなリスク回避ができるというわけだ。
しかも、開幕メジャー入りできなかった招待選手たちを傘下のマイナーリーグに置くことで(招待選手の中には開幕メジャー入りを果たせなかった時点でチームを離れる場合も少なくないが)、シーズン中の不測の事態にも対応でき、大幅な戦力ダウンを免れることもできる。
また、彼らがシーズン途中昇格した際はメジャー年俸も日割り計算になり割安になる場合もあるのだ。