濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
年末の格闘技2大興行の真実。
地上波では観れなかったベストバウト。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/01/07 10:30
『戦極Soul of Fight』のメインイベント。腕十字は決まらなかったものの、日沖発は終始、マルロン・サンドロを圧倒した
自演乙に完敗した青木と、青木の仇を討った川尻と。
青木が完敗したことを受け、ともにDREAMを支えてきた川尻が「それならナンバー2同士で闘いたい」と希望したことで、この試合は実現したのだ。しかもこの大会で、青木はK-1ファイターにMMAルールのラウンドでKO負けするという失態を演じている。そのうえ川尻が負ければ、DREAMの存在意義そのものが揺らぎかねない。
そういう試合で、彼は勝ったのである。
判定3-0は文句なし。川尻はすべてのラウンドでテイクダウンに成功し、必死で起き上がろうとするトムソンを抑え込み続けた。テイクダウンするか、されるか。立つか、抑えるか。その攻防は地味ながら、見ていて力の入るものだったのは間違いない。
緊張感のない“テレビ格闘技”の衰退。
日沖vs.サンドロと川尻vs.トムソンを見ていて、あらためて感じたことがある。
強豪同士の対戦における緊張感こそ、最高のエンターテインメントだということだ。
派手な殴り合いやサプライズ的マッチメイクも観客を喜ばせるが、何よりも“勝つか負けるか”こそがスポーツの核なのである。
『Dynamite!!』の視聴率は平均9.8%。この数字をもって“格闘技の凋落”を謳うことはたやすい。だが格闘技の本当の魅力は、テレビには映らないところで発揮されていたのだ。凋落したのは“テレビ格闘技”であって“格闘技”ではない。