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投手の酷使と田中将大の未来。
~ヤンキース移籍の期待と懸念~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAP/AFLO
posted2014/01/26 08:20
7年間在籍した楽天のホーム、コボスタ宮城に一礼する田中将大。ヤンキースタジアムで、縦縞のユニフォームに袖を通した田中を見られる日が楽しみだ。
田中将大がヤンキースと契約した。年俸総額1億5500万ドルの7年契約。クレイトン・カーショーの2億1500万ドル(7年)やジャスティン・ヴァーランダーの1億8000万ドル(7年)には及ばないが、イチローの9000万ドル(5年)やダルビッシュ有の6000万ドル(6年)を大きく上回る金額になった。ヤンキースの投手陣では、C・C・サバシアの1億6000万ドル(7年)に次ぐ高評価だ。
よく払ったなあ、というのが、私の率直な感想だ。伊良部秀輝や井川慶でかなりの火傷を負った球団がこんなに大枚をはたいたのは、よほど綿密なリサーチを重ねたからだろう。いくら日本で超絶的な成績を残したとはいえ、田中は大リーグでまだ1球も投げていないピッチャーなのだ。
田中のスライダーとスプリッターは、大リーグでも十分に通用するはずだ。上原浩治のスプリッターよりも田中のスプリッターのほうが打ちにくい、と私は思う。ただ、まっすぐは156キロ止まりで、平均すると146~148キロぐらいだ。ダルビッシュと比べた場合、制球力では田中が上だが、球の凄みではダルビッシュに軍配を挙げたくなる。
ダルビッシュの図太さと適応能力はぜひお手本に。
メンタル面はどうだろうか。
田中は修正能力が高いといわれる。ダルビッシュよりも冷静で、危地に陥っても傷口を最小限に抑える能力があるとも評価される。
たしかにダルビッシュには、連打を食うとムキになって投球が単調になる傾向がないとはいえない。だが、フィールド外の生活面までふくめて考える必要もあるのではないだろうか。田中が内弁慶だとはいわないが、ダルビッシュの図太さと適応能力の高さは、ぜひお手本にしていただきたい。
それよりも気がかりなのは、若い時期の投げすぎだ。これはもう、多くの識者が指摘していることなのでいまさら蒸し返したくないのだが、データを眺めているとやはり警戒すべき結果が見えてくる。